沖縄県の石垣島は、蝶好きであれば憧れる場所の1つです。沖縄には、沖縄でしか見ることができない蝶が多く存在しますが、ここ石垣島はその中でも種類・生息数ともに非常に豊富であることで有名です。
私も昔から石垣島に1度行ってみたいとずっと思っていました。そして、2016年の3月に、蝶の観察だけを目的として思い切って石垣島に行くことにしました。結果、行って本当に良かったと思っています。これまでに見たことの無い蝶を沢山見ることができました。
この記事では、2016年3月に石垣島で観察した蝶を紹介します。なお、これまでに沖縄本島で観察した蝶は以下の記事で紹介していますので、興味があればこちらも是非ご覧ください。
アゲハチョウ科(7種類)
アオスジアゲハ
アオスジアゲハは本州でも普通に見られる種ですが、ここ石垣島でも普通に生息していました。本州のアオスジアゲハと比べて、八重山諸島に生息するアオスジアゲハは青色帯が広くて鮮やかな特徴があります。
クロアゲハ
クロアゲハは本州でも普通に見られる蝶ですが、ここ石垣島のクロアゲハは沖縄・八重山亜種とされています。沖縄・八重山亜種の♀は後翅外縁の赤色紋が大きくなります。本州のと比べて、一見全く別の種類の蝶に見えるほど、赤色紋が目立ちました。
ジャコウアゲハ
ジャコウアゲハも本州で普通に見られる蝶ですが、石垣島で見られるジャコウアゲハは八重山亜種とされています。八重山亜種は、♂の後翅表面に赤紋が強く表れる特徴があります。本州で本種は非常に緩やかに飛ぶ特徴がありますが、石垣島でみた本種それよりもさらに緩やかに飛んでいるように感じました。
シロオビアゲハ
シロオビアゲハは本州では見ることができない蝶です。本種の♀は遺伝的にベニモンアゲハに擬態したベニモン型と、シロオビ型の模様があることが知られています。今回観察できたのではシロオビ型でした。
参考に、2009年8月28日の沖縄本島で撮影したベニモン型のシロオビアゲハ♀の写真を掲載します。これは、有毒であるベニモンアゲハに擬態することで、天敵から身を守っていると考えられています。
ベニモンアゲハ
ベニモンアゲハは、1895年に観察の記録がありますが、1968年に石垣島等で発生が発見されそれ以降急激に個体数を増やして現在に至っています。飛び方はジャコウアゲハに似て緩やかに飛んでいました。
ミカドアゲハ
ミカドアゲハは本州でも観察できる蝶ですが、生息域が局地的でこれまでに観察はできていませんでした。ここ石垣島には普通に生息している様子で、複数の個体を観察することができました。
ヤエヤマカラスアゲハ
ヤエヤマカラスアゲハは沖縄県にのみ生息する蝶で、その中でも石垣島、西表島、波照間島、与那国島などに生息しています。3月上旬ごろから見ることができる蝶で、この時は多くの個体にであることができました。石垣島に行くのが初めてなので、当然本種を観察するのも今回が初めてです。本州のカラスアゲハと比べると、翅表の緑鱗の輝きが強い印象でした。
タテハチョウ科(13種類)
イシガケチョウ
イシガキチョウと呼ばれることもあります。見た目が非常にインパクトのあるイシガケチョウです。20日と21日の両日で観察することができました。関東地方では見ることができませんが、本州でも西日本や九州四国沖縄では比較的普通に見られる蝶です。
イワサキタテハモドキ
イワサキタテハモドキは迷チョウ(元々日本に土着していない蝶で、海外から飛翔して一時的に発生する蝶)です。土着している蝶ではないので、まさかこの蝶が見られるとは思っていませんでした。というのも、「日本産蝶類標準図鑑(学研・白水隆著)」には「きわめてまれである」と記載されているからです。ですが、この日は比較的多くのイワサキタテハモドキを観察することができ、今後定着するということもあるのではないかと感じるほどでした。
ウスイロコノマチョウ
ウスイロコノマチョウの秋型を観察することができました。ウスイロコノマチョウは夏型と秋型で模様が大きく異なり、夏型はジャノメが明瞭になるのに対して、秋型はジャノメがなく、枯葉のような模様になります。
参考に、2009年8月31日に沖縄本島で観察した夏型のウスイロコノマチョウの写真を掲載します。
コノハチョウ
帰り際にコノハチョウを1頭発見しました。その名の通り、木の葉(枯葉)によく似た模様をしていて、擬態する蝶の代表例としてよく取り上げられます。元々は沖縄に生息する蝶ですが、現在では鹿児島県沖永良部島でも見られるようになっている蝶です。
シロオビヒカゲ
酷い写真でこの写真だけでは判別が難しいですが、これは確かにシロオビヒカゲでした。地面に止まっているシロオビヒカゲを発見し、カメラのシャッターを切りましたが、その瞬間に飛び立ってしまいこのような写真になってしまいました。o.1秒でも早くシャッターが切れていたらちゃんと撮れていたかもしれません。模様が独特ですので、見た瞬間にシロオビヒカゲとわかりました。西表島と石垣島にのみ生息する蝶ですので、観察できた時は非常に嬉しかったです。
スジグロカバマダラ
ここ八重山諸島では普通に見られる蝶ですが、私個人としては初めて見る蝶です。カバマダラと似ますが、その名の通り黒い筋があるため容易に見分けることができます。
ツマグロヒョウモン
ボロボロのツマグロヒョウモン♀を発見しました。現在では関東地方でも最も普通に見られる蝶で、南西諸島で分布する唯一のヒョウモンチョウです。
マサキウラナミジャノメ
この2日間で、最も普通に見られた蝶がこのマサキウラナミジャノメでした。関東地方でもヒメウラナミジャノメのように、道路を歩いていると頻繁にとんでいる本種を観察することができました。とはいえ、この蝶は八重山諸島の固有種であり、それ以外では見ることができません。和名の”マサキ”は、石垣島で蝶の採取に尽力した正木任氏からつけられました。
ヤエヤマイチモンジ
八重山諸島に生息するイチモンジチョウであるということから、ヤエヤマイチモンジと名付けられました。♂と♀で模様が全く異なり、一見別種のように見えます。今回観察できたのは♀です。微妙な高さのところにとまっていたため、なかなかよい角度からの撮影ができませんでした。
リュウキュウアサギマダラ
沖縄県に生息するアサギマダラです。至ることろで観察することができ、普通種であることが確認できました。
リュウキュウヒメジャノメ
本州でのヒメジャノメのようなイメージで、ここ石垣島にはリュウキュウヒメジャノメが生息しています。模様が微妙に異なることを除いて、飛び方などほとんど本州のヒメジャノメと同じでした。普通に飛んでいました。
リュウキュウミスジ
こちらは本州のコミスジと同じようなイメージでリュウキュウミスジが生息していました。決して珍しくなく、それなりの数のリュウキュウミスジを観察することができました。
ルリタテハ
ルリタテハは本州でも観察できる蝶ですが、沖縄に生息する個体は南西諸島亜種となり、やや大型であり、青色帯が少し内側に寄る特徴があります。
参考に、2016年2月22日に千葉県流山市で観察したルリタテハ(日本本土亜種)の写真を掲載します。南西諸島亜種は日本本土亜種の比較して、青色帯が少し内側に寄っているのがわかりますでしょうか。
シジミチョウ科(4種類)
石垣島では5種類のシジミチョウ科の蝶を観察することができましたが、ここではウラギンシジミを除く4種類について写真を紹介しました。
ウラギンシジミは写真を撮ることはできたのですが、かなり遠くにいる個体を望遠レンズで撮影したため、見せられるような写真ではないので、掲載しないことにしました。
正直もう少し多くの種類を観察できるかなと思っていましたが、タテハチョウ科やアゲハチョウ科と比べてシジミチョウ科は種類も数も少ない印象です。
アマミウラナミシジミ
沖縄や奄美諸島見られる種で、この地域では最も普通に見られる蝶の1種です。ですが、この時は写真の1頭を見たのみでした。本当は尾があるのですが、この個体は擦れていて尾もなくなっています。
タイワンクロボシシジミ
タイワンクロボシシジミも沖縄では最も普通に見られる蝶の1種です。ですが、こちらも1頭しか出会うことができず、それも擦れた個体でした。もう少し綺麗な個体に出会えると良かったのですが、、、
ムラサキシジミ
蜘蛛の巣に引っかかったムラサキシジミを見つけました。ムラサキシジミは関東地方でも普通に見ることができる蝶で、ここ石垣島でも普通に生息しています。奄美大島以南のムラサキシジミは、それ以外のと比較して表面の青色斑が広がるなどの特徴があり、台湾亜種とする場合もあります。
ヤマトシジミ
ここ石垣島に生息するヤマトシジミは、南西諸島亜種とされていて、翅表の青藍色が灰白色をおびる傾向があります。今回の石垣島観察で一番最初に観察できたのがこのヤマトシジミでした。本州でも最も普通に見られる種ですが、石垣島でも同様に多くの個体を観察することができました。
シロチョウ科(5種類)
ウスキシロチョウ
ウスキシロチョウは発生する季節により模様が異なる、いわゆる季節型がある蝶で、以前は高温期の時の型をムモンウスキシロチョウ、低温気の時の型をギンモンウスキシロチョウと呼び、別種として扱われていました。今回観察したウスキシロチョウはギンモンがありましたので、現在ではギンモン型(低温期型)のウスキシロチョウと呼ばれることがあります。
クロテンシロチョウ
クロテンシロチョウは元々は日本には生息していなかった種であると考えられています。1988年に与那国島に定着した後、石垣島には2002年から継続して発生を続けています。この時は1頭のクロテンシロチョウを観察できました。ひらひらと近くを飛んでいたのですが、なかなか止まらず、撮影機会に恵まれなかったため、良い写真を残すことはできませんでした。
タイワンキチョウ
石垣島と西表島の八重山諸島にのみ生息する蝶です。キタキチョウ・ミナミキチョウ・タイワンキチョウの見分けは難しく、飛んでいる姿から見分けるのは難しいので、撮影してから種を確認していました。
ナミエシロチョウ
八重山諸島では普通に見られる蝶です。季節型がある蝶で、低温期型と高温期型で大きく模様が異なります。今回観察できたのは、白色の無紋(先端のみ黒)の低温期型のナミエシロチョウです。
ミナミキチョウ
タイワンキチョウやキタキチョウとの見分けが難しい蝶です。奄美大島以南に生息しています。
セセリチョウ科(6種類)
イチモンジセセリ
本州でも普通に見られる蝶で、石垣島でも観察することができました。本州と沖縄で地理的な変異も無い種ですので、見た目も本州のものと変わりありません。
クロセセリ
沖縄や九州と一部四国や本州でも見られる蝶です。クロセセリは通常、翅の裏は黒いのですが、白色鱗が散布される個体もあり、今回観察したクロセセリはまさにそのタイプでした。
クロボシセセリ
元々は日本に生息していなかったと考えられている蝶で、1973年に石垣島で最初に発見されました。その後は徐々に生息域を拡大し、今では奄美大島でも見ることができます。
チャバネセセリ
こちらもイチモンジセセリ同様に本州で普通に見られるセセリチョウです。地理的な変異も無いため、本州で見るものと基本的には同じ模様をしています。
ネッタイアカセセリ
石垣島や西表島などの八重山諸島にのみ生息する蝶です。この2日間で、最も普通に見られたセセリチョウ科はネッタイアカセセリでした。
ユウレイセセリ
沖縄のみで見られるセセリチョウ科です。ユウレイセセリという独特の名を持つ蝶ですが、名前の由来は、長いこと名前がわからず正体不明の幽霊のような蝶だったことから、この名がつけられました。
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