スジクワガタを飼育してみたい。飼育するために何か特別なことが必要なのでしょうか?
スジクワガタは見た目がコクワガタと非常に良く似たクワガタで、コクワ・コノギリ・ミヤマ・オオクワと比較すると一般的な認知度は高くないクワガタです。野生で採集した個体をコクワガタと間違える人も多いと思います。
そのため、この記事ではスジクワガタの特徴や、スジクワガタの成虫の飼育方法、産卵セットの組み方などについて解説をします。この記事を最後までお読みいただけば、その日からスジクワガタを飼育できるようになります。
スジクワガタの紹介
スジクワガタの特徴と生息環境
スジクワガタは”スジがあるクワガタ”という意味で、メスや小型のオスの個体には羽に縦のスジがあります。大型のオスの個体はコクワガタによく似ますが、野生で採集できる多くのオスの個体は小型です。小型のクワガタで、体長は本土のスジクワガタのオスで13.5~40.0mm、メスで14~24mmです。
日本に生息するクワガタの中でも比較的よく見られる種で、北海道から九州までほぼ日本全国に分布しています。高温には弱いため、飼育する時は高温にならないよう注意が必要です。
スジクワガタは他のクワガタと同様に、クヌギやコナラなどの樹液をエサとします。活動時間は主に夜間なので、夜間に樹液が出ている木を探しに行くと、野生のスジクワガタに出会える可能性が高まります。
スジクワガタの亜種
日本には2亜種のスジクワガタが生息しています。
- 一般的なスジクワガタ(原名亜種)
- 屋久島に生息するヤクシマスジクワガタ
スジクワガタの寿命
スジクワガタは6か月~2年程度です。越冬することができるクワガタですので、長く飼育を楽しむことができるのも大きな特徴です。
スジクワガタの成虫の飼い方・育て方
スジクワガタは比較的高温に弱い種なので、高温にならないよう注意すれば長く生きてくれます。スジクワガタを飼育するためには、まずは飼育セットを組みましょう。
飼育セットの作り方
スジクワガタを産卵させることを目的としない場合、飼育セットはカブトムシと同じで問題ありません。具体的には以下3点です。
- 飼育ケースにマット(土)を入れる。
- 転倒した時に起き上がれるように、朽ち木・止まり木を入れる。
- エサとなる昆虫ゼリーをセットする。
温度と保湿管理
スジクワガタの飼育セットが準備できれば、あとは適切に温度と湿度を管理すればスジクワガタは長生きをします。
スジクワガタの適温は20℃から28℃です。
30℃以上の飼育環境下ではスジクワガタが弱ってしまう恐れがありますので、温度管理は適切に行いましょう。室温が30℃以上になってしまう場合の温度管理の方法は次の2つがあります。
また、スジクワガタは他のクワガタと同様に乾燥に弱い種です。マットは霧吹きなどで保湿をするようにしましょう。保湿の目安としては、マットを握った時に団子になる程度です。加湿のし過ぎもスジクワガタを弱らせる原因になりますので、保湿管理は適切に行いましょう。
スジクワガタの越冬
スジクワガタは飼育下では越冬して2年程度生きることができます。スジクワガタは気温が10度前後で越冬しますので、越冬させる場合は5℃~10度程度で管理すると良いでしょう。越冬する時の留意点は以下の通りです。
- 暖かい日は越冬から目を覚ましてエサを食べることがあります。また越冬前後も昆虫ゼリーを食べます。エサとなる昆虫ゼリーは暖かい日や越冬前後は準備しておくようにしましょう。
- 越冬中も乾燥すると死んでしまうことがあります。越冬中であっても加湿は適切に行いましょう。
暖かい部屋で年中飼育すれば、越冬せずに冬を過ごすことができますが、その分寿命は縮まります。
スジクワガタの成虫を育てるために必要なもの
【必要なもの①】飼育ケース(虫かご)
スジクワガタは小型のクワガタであるため、サイズが”小”の飼育ケースでも問題ありませんが、”中”以上の方が自由に動き回れるためオススメです。オスを同じケースに複数頭入れて育てると喧嘩をして寿命を縮めてしまいますので、オスは必ず1ケースで1匹としましょう。
コバエが気になる人は、コバエを防ぐことができる飼育ケースを購入するようにしましょう。
【必要なもの②】マット
クワガタを飼育するための専用マットをホームセンターや通販などで購入することができます。飼育マットは必須のアイテムですので、飼育前に必ず購入しておくようにしましょう。飼育マットには様々な種類があるので、目的にあったマットを選ぶようにしましょう。ポイントは以下の通りです。
- スジクワガタを産卵させて幼虫を育てたいと考えている場合は、クヌギなどでできた産卵・幼虫飼育用のマットを選ぶようにしましょう
- 産卵を考えておらず、ダニなどの発生を防ぎたいと考えている場合は、ヒノキなどの針葉樹でできたダニやコバエなどの発生を抑えるマットを選ぶようにしましょう。
【必要なもの③】朽ち木・止まり木・エサ皿
クワガタやカブトムシは転倒してしまうと、自力で起き上がることができません。そのため、起き上がる時に掴まれる朽ち木などを置いておくことが必要です。
また、エサ皿があれば、ゼリーが周りに飛び散り、マットが汚れるのを防ぐことができます。エサ皿は必須ではありませんが、あると便利なアイテムです。
【必要なもの④】昆虫ゼリー
スジクワガタは昆虫ゼリーで育てることができます。昆虫ゼリーの他、バナナやリンゴなどで育てることもできますが、水分量の多いスイカやメロンなどは体調を崩すおそれがありますので与えないようにしましょう。昆虫ゼリーは3日に1回は交換するようにしましょう。産卵をさせる場合はプロゼリーなどの高タンパクのゼリーがオススメです。
【必要なもの⑤】虫よけシート
コバエの侵入を防止する飼育ケースを使用している場合は不要ですが、普通の飼育ケースを使用している場合で、コバエの侵入を防止したい場合は、虫よけシートを使うことをオススメします。飼育ケースの蓋にかさみ込むことで、コバエの侵入を防止することができます。虫よけシートには以下のメリットがあります。
- コバエの侵入を防止できる
- 昆虫マットの乾燥を防ぐことができる
- 臭いを防ぐことができる
スジクワガタの入手方法
スジクワガタの成虫を入手する方法は主に以下3つがあります。
- 野生のスジクワガタを捕まえる方法
- 通販などで購入する方法
- 累代飼育する方法
野生のスジクワガタを捕まえる
スジクワガタは比較的野生で見つけやすい種であると言えますので、野生のスジクワガタを探してみるのも1つの方法です。
スジクワガタはクヌギやコナラなどの樹液をエサとしています。昼間のうちに樹液が出ている木を見つけて、夜に採集に出掛けてみてはいかがでしょうか。
通販などで購入
スジクワガタはオオクワガタなどと比べてメジャーなクワガタではないので、ホームセンターでの取り扱いは基本的に無いと思います。そのため、購入を考えている方は通販で購入するようにしましょう。数千円でペアのスジクワガタを購入することができます。野生の採集が難しい人は、通販での購入を検討してみましょう。
累代飼育する
スジクワガタを産卵させて幼虫を育て、次世代のスジクワガタの成虫を育てることを累代飼育と言います。スジクワガタは産卵させるのがそれほど難しくはありませんので、累代飼育が上手くできれば、スジクワガタをどんどん増やしていくことができます。
スジクワガタの交尾
野生で捕まえてきたスジクワガタのメスは、8割程度の確率で交尾済みです。
そのため、野生のスジクワガタ(WD(ワイルド)といいます)は交尾をさせなくても卵を産む可能性が高いです。
一方で、飼育環境下で羽化したスジクワガタには注意が必要です。スジクワガタは羽化してすぐに交尾して産卵するわけではありません。
羽化したスジクワガタは、羽化してから交尾ができるようになるまでに半年程度かかります。
つまり、6月頃に羽化したスジクワガタが交尾して産卵できるようになるには、冬ごろになります。秋ごろに産卵して孵化した幼虫は、成長しないうちに寒い冬を迎えるため、羽化した年に交尾・産卵をさせることはオススメしません。羽化した翌年の産卵が最もオススメです。
次に、スジクワガタの交尾の方法を解説します。交尾をまだしていないスジクワガタを交尾させるためには、同居ペアリングとハンドペアリングの2つの方法があります。
同居ペアリング
同居ペアリングとは、スジクワガタのオスとメスを同じケースに入れることで始まる交尾のことをいいます。メリットは、同じケースに入れておくだけで交尾が完了する点です。一方で、交尾の瞬間を見逃すと、交尾済みかどうかがわからないのがデメリットです。
ハンドペアリング
ハンドペアリングとは、スジクワガタのオスを人為的にメスの上に乗せることで始まる交尾のことをいいます。同居ペアリングでメスが交尾を拒否する場合でも、ハンドペアリングで交尾が始まることもあります。交尾を自分の目で確認することができることが大きなメリットです。
交尾をする時期
スジクワガタは蛹から羽化して間もない個体は繁殖能力がないため、交尾を行うことができません。一般的には、羽化して半年程度経過した個体は繁殖能力がつき、交尾ができる状態となっています。
スジクワガタは越冬した後の方が多くの卵を産んでくれるという特徴があります。羽化したその年ではなく、越冬させてから卵を産ませるのも良い選択です。
スジクワガタの産卵方法~産卵セットの組み方~
次に交尾済みのスジクワガタを産卵させる方法を紹介します。
産卵させる時期
産卵はいつでも可能というわけではありません。産卵には温度が重要です。気温が20℃代前半で安定している時期にスジクワガタはよく産卵します。
気温が20℃を下回るようになると、スジクワガタの活動が低下します。また、スジクワガタは30℃以上の高温には強くありません。
スジクワガタの産卵セットの組み方
交尾を終えたスジクワガタは、産卵セットを組んでその中に入れると卵を産み始めます。まずは産卵セットの組み方を解説します。
スジクワガタを産卵させるためには、次の手順で産卵セットを組みます。
産卵セットを組む具体的な手順
以下では、それぞれのステップに分けて具体的に解説をします。
産卵してから孵化するまで(割り出し)
最後に、スジクワガタが産卵して孵化するまでにやることを解説します。
スジクワガタの卵は10日から20日程度で孵化します。産卵の状態や幼虫の成長の状態を確認するため、割り出しを行います。
割り出しを行う時期
割り出しは、産卵セットを組んでから2か月程度で行うようにしましょう。
割り出し後のスジクワガタの幼虫
割り出して取り出したスジクワガタの幼虫は、以下の2つの方法で成長させることができます。
- 菌糸ビンで飼育する。
- マットで飼育する。
菌糸ビンで飼育する
菌糸ビンとは細かく砕いたクヌギなどの広葉樹のマットにキノコの菌を繁殖させたものです。菌糸ビンは通販などで購入することができます。スジクワガタの幼虫は、菌糸を食べて成長します。2~3か月で交換し、蛹になるのを待ちます。
発酵マットで飼育する
菌糸ビンを使わなくても、クヌギやコナラなどの広葉樹の発酵マットで飼育することもできます。ホームセンターや通販などで、クワガタの幼虫の飼育用のマットを購入すれば、問題なく育ちます。
温度管理と湿度管理
温度管理は非常に重要です。30℃を越えるような状態は避けて、25℃~28℃をキープするようにしましょう。30℃を越える環境に置いておくと死んでしまうリスクが高まります。
また、マットは乾燥しないよう、定期的に霧吹きを吹きかけるなど、マットは適度な湿度を保つようにしましょう。湿りすぎていると、カビが生えることがありますので、過度に湿度を高めるのも避けるようにしましょう。
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