皆さんは昆虫の起源を知っていますでしょうか?
現在、地球上では200万種類程度の生物が知られていますが、そのうち約150万種が動物であり、約100万種が昆虫です。つまり、全動物の7割近くが昆虫であり、地球にいる生物の中で最も多様性が高い存在と言えます。
現在は地球で非常に繁栄している昆虫ですが、昆虫はいつ地球に誕生して、いつからこんなに繁栄したのでしょうか?この記事では、昆虫の起源や進化の過程を解説します。
そもそも昆虫とは何か?
昆虫の定義を知っていますか?
昆虫は、以前は胸部に3対6本の脚を持つ六脚類(ろっきゃくるい)のうち、内顎綱(ないがくこう)を除いた生物と言われていましたが、近年は内顎綱は単系統群ではないという研究も発表されています。つまり、「六脚類=昆虫類」と考えて問題ありません。
簡単に言うと昆虫は、体が頭部・胸部・腹部に分けられ、胸部に3対6本の脚を持つ節足動物です。
ちなみに、内顎綱はトビムシやカマアシムシ、コムシが含まれます。
昆虫の生活環境
昆虫はほとんどの種が陸上で生活しており、若干は淡水で生息する種もいますが、海中に生息する種はほとんどいません。
水中で生息する昆虫は水生昆虫と呼ばれ、例えばタガメやゲンゴロウ、トンボ(ヤゴ)などがいます。ですが、水生昆虫の祖先は陸上の昆虫で、水中に適応していったと考えられています。
昆虫の翅
ほとんどの昆虫は胸部に2対の翅があります。翅を持たない昆虫は原始的な昆虫とされています。全昆虫の99%が飛翔します。
昆虫は翅を獲得し、空中を飛べるようになったことが今日の繁栄の繋がったと考えられています。自力で飛翔することで生活圏を広げ、様々な環境に適応することで多様化していきました。
自力で飛翔できる動物は、昆虫以外には鳥類や哺乳類のコウモリぐらいです。
幼虫と成虫で全く姿形が異なる昆虫がいる
昆虫は完全変態することも良く知られています。割合としては、80%以上の昆虫が完全変態をすると言われています。これは蝶やカブトムシをイメージすると分かりやすいと思います。
蝶は、幼虫の時は主に植物の葉っぱをモグモグと食べていますが、成虫はストローで花の蜜などを吸います。これは、蛹の段階で体を一度完全にドロドロに溶かしてまた体を作り直し、最終的には完全に姿を変えてしまいます。幼虫と成虫で全く異なる姿形になることから完全変態と言います。
一方で、幼虫と成虫の姿があまり変わらない昆虫を不完全変態と言い、ほとんど変化しない昆虫を無変態と言います。
例えばセミやバッタは不完全変態の昆虫です。これらの昆虫は幼虫が大きくなり、最後に脱皮をすると翅が伸びて成虫になります。また、無変態昆虫としてはシミなどが知られています。無変態が原始的な昆虫と言われています。
変態の目的は何だと思いますか?変態も昆虫の多様性に繋がっています。幼虫の時期はエサを食べて成長に専念しますが、変態をして成虫になり生活環境を広げることでより良い場所に子孫を残すことができるようになります。様々な環境への分散と適応が繰り返されることで種の進化を促し、多様性に繋がっていきます。
昆虫と鱗翅目(チョウ目)の起源は?
昆虫の祖先はどれぐらい昔に産まれたのでしょうか。
昆虫の起源
筑波大学などの研究によると、昆虫の起源はなんと約4億8千万年前に遡ることが分かっています。陸上の植物の起源が約5億1千万年前と言われていますので、昆虫は陸上の生態系を作り出した初期の生物であったと考えられています。
その後、約4億年前には翅のある昆虫類が現れたと考えられています。これは、他のどの生物よりもはるか前に昆虫が飛翔能力を獲得したと考えられています。
鱗翅目(チョウ目)の起源
翅を獲得した昆虫はその後、多種多様な形態に進化していきます。その中で、鱗翅目(チョウ目)の共通の祖先が現れたのは約3億年前と言われています。
この時代はまだ被子植物が誕生したばかりの時代でした。エサを食べるためのストローは、樹液や水を吸うのに使われていたと考えられます。
鱗翅類(チョウとガ)の進化の過程
約3億年前に誕生した鱗翅目(チョウとガの共通の祖先)は、2.4億年前には被子植物が多様化して花を咲かせたことで、花の蜜を吸うようになり、1.2億年前には鱗翅目が一気に増えていったと考えられています。
初期の鱗翅目の特徴
初期の鱗翅目はどの種も主に夜間に活動していたと考えられています。昼間に活動するチョウは約1億年前に出現しますが、これは前述の被子植物の多様化により昼間に花の蜜を吸う種がどんどん誕生したためと考えられています。
そして鱗翅目の多くは、6500万年前の隕石の衝突後にどんどん多様化していったと考えられています。
チョウの多様化
隕石の衝突により恐竜が絶滅すると、鳥類の繁栄が始まりました。昼間に活動するチョウにとって鳥類は天敵です。そのため、チョウは鳥類の捕食から逃れるために視覚的な進化を遂げていきます。例えば、背景に擬態したり、毒を持つ蝶に擬態することで、捕食されるのを防ぐようになりました。
ガの多様化
ガの天敵は夜間に活動するコウモリです。コウモリは約6000万年前に現れたと考えられており、その頃からコウモリの捕食を防ぐためにガは多様化していきます。
前述の通り、チョウは昼間に鳥類の捕食から逃れるために視覚的な進化を遂げましたが、蛾は視覚的ではなく聴覚の進化をしました。その理由は、コウモリは超音波により捕食生物を探しているためです。蛾は聴覚器官を進化・多様化させることで、コウモリの捕食を防いでいったと考えられています。
チョウとガの違いは何か?
チョウとガには本質的な違いはありません。鱗翅目の中でアゲハチョウ上科に含まれるものをチョウと呼び、それ以外を全てガと呼んでいるに過ぎません。
よくチョウとガの違いとして以下が挙げられます。これらの分類は多くの場合は当てはまりますが、例外も多く存在します。例えば海外にはシャクガモドキという種類の蝶がいますが、この蝶は夜行性です。
- 蝶は美しくて、蛾は毒々しい(地味な)模様をしている。
- 蝶は昼に飛んで、蛾は夜に飛ぶ。
- 触覚の先端の形状が違う。具体的には、蝶は触覚の先端がマッチ棒のように膨らんでいる(棍棒状)のに対して、蛾は先端が細くなっていたり櫛歯状になっていたり毛が生えていたりする。
チョウとガの違いについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも是非ご覧ください。
昆虫の起源・進化の過程まとめ
この記事では昆虫の起源や進化の過程を解説しました。以下にこの記事の内容をまとめます。
- 昆虫とは体が頭部・胸部・腹部に分けられ、胸部に3対6本の脚を持つ節足動物のことを言う。
- 昆虫の起源は約4億8千万年前で、昆虫は陸上の生態系を作り出した初期の生物であったと考えられている。
- 鱗翅目(チョウ目)の共通の祖先が現れたのは約3億年前で、エサを食べるためのストローは、樹液や水を吸うのに使われていたと考えられます。
- 鱗翅目は2.4億年前には被子植物が多様化して花を咲かせたことで、花の蜜を吸うようになり、1.2億年前には鱗翅目が一気に増えていった。
- 主に昼間に活動するチョウは鳥類の捕食から逃れるために視覚的な進化を遂げていった。
- 主に夜間に活動する蛾は、コウモリから逃れるために視覚的ではなく聴覚の進化させた。
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