黒部ダムの入り口として有名な扇沢(北アルプス山麓)には、クモマツマキチョウという珍しい蝶が生息しています。この蝶は、標高が概ね1,000m以上の高山にのみ生息する蝶で、平地には生息していないため、普段の生活の中では見る機会がない蝶です。
ここ扇沢には、クモマツマキチョウ以外にも珍しい蝶が生息していますので、この記事ではこれまでに扇沢周辺で観察できた蝶を紹介します。
※長野県のクモマツマキチョウは採集が禁止されていますのでご注意下さい。
扇沢の紹介
扇沢は黒部ダム観光の出発点になる場所であり、標高は1,300m程度です。一見、特に特徴がある場所には見えませんが、扇沢の爺ヶ岳登山口付近には高山蝶であるクモマツマキチョウが生息しています。
午前と午後でクモマツマキチョウが見られる場所が変わり、午前中は沢の右岸側で、午後になると沢の左岸側でよく見られます。
クモマツマキチョウの発生時期は5月中旬頃からで、その頃には多くの蝶愛好家がカメラを持って周辺を歩いている姿が見られます。
クモマツマキチョウの紹介
分布 | 本州 |
生息環境 | 高山 |
発生回数 | 年1回 |
成虫が見られる時期 | 5月下旬頃から6月頃まで |
越冬の状態 | 蛹で越冬 |
食草 | ミヤマハタザオ、イワハタザオなどのアブラナ科 |
亜種 | 飛騨山脈亜種、赤石山脈・八ヶ岳亜種 |
クモマツマキチョウは高山蝶の1種とされ、主に標高1,000m~2,000mの高山に生息します。オスは前翅の先端が鮮やかな橙色になるのが特徴です。成虫は年1回の発生で、標高1,000m程度の場所では4月下旬頃から見られ、標高が高くなるに従い発生時期は遅くなります。標高1,500mあたりでは5月下旬頃から6月頃にかけて見られ、標高2,000m付近では7月頃に見られます。
扇沢でこれまでに観察した蝶
以下では、これまでに扇沢で観察した蝶を紹介します。
クモマツマキチョウ
2024年5月25日に扇沢に行き、クモマツマキチョウの♀1頭を観察しました。
この日は多少の風はありましたが、朝から晴天で多くのクモマツマキチョウが観察できると期待していました。朝9時30分ごろに現地に到着し、まずは午前中に現れる沢の右岸側の林道を登っていきました。しかしながら、午前11時を過ぎても一向にクモマツマキチョウは姿を現しません。
11時30分ごろになり、沢の右岸側を諦め、午後に姿を現す左岸側に移動しました。ですが、左岸側も全くクモマツマキチョウの姿が見えません。朝から蝶愛好家の方々が10人近くいましたが、その多くが午後13時頃には帰っていきました。
私は最低でも1頭は観察したかったので、粘り強く待っていると、クモマツマキチョウのメスが1頭姿を現しました。クモマツマキチョウの食草であるハタザオに産卵する瞬間の写真が撮影できました。
観察できたメスは、産卵したらすぐに飛んで行ってしまいました。この日は残念ながらクモマツマキチョウのオスは観察できず、観察できたのはメス1頭だけでした。気温が20℃近くまで上がったため、クモマツマキチョウにとっては少し気温が高すぎたのかもしれません。
キベリタテハ
キベリタテハは比較的標高が高い場所に生息するタテハチョウ科の蝶です。クモマツマキチョウを探していたところ、数頭のキベリタテハが観察できました。この時期のキベリタテハは、前年に羽化して越冬した個体ですので、どの個体も翅が痛んでいました。
クジャクチョウ
クモマツマキチョウを観察していたところ、クジャクチョウも観察できました。クジャクチョウもキベリタテハと同様に、5月に見られる個体は、前年に羽化して越冬していますので、翅が痛んだ個体ばかりです。
スジグロシロチョウ
クモマツマキチョウのメスとよく似ていて見間違えやすいのが(ヤマト)スジグロシロチョウです。ヤマトスジグロシロチョウとスジグロシロチョウは見た目で見分けるのが困難なので、ここでは単にスジグロシロチョウと記載します。ロケーション的には、おそらくヤマトスジグロシロチョウだと思われますが、、、スジグロシロチョウは個体数が多く、至る所で観察できました。
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