庭のミカンの木にアゲハの幼虫がいるけど、クロアゲハなのかアゲハチョウなのかわからない。見分け方を教えてほしい。
アゲハチョウの幼虫は非常に良く似ていて、慣れていないと見分けるのは難しいです。この記事では、本州でよく見られる以下4種類アゲハの幼虫の見分け方を解説します。
【総論】アゲハの幼虫の見分け方
アゲハの幼虫は、見た目による違いの他にも、ツノの色の違い、エサの違いがあります。アゲハの幼虫を見分けるためには、これらの情報が参考になります。以下で具体的に解説します。
なお、アゲハの蛹の見分け方は以下の記事で紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
アゲハの幼虫の見た目の違い
アゲハの幼虫は卵から孵化してから基本的には4回脱皮をします。孵化直後の幼虫を1齢幼虫と呼び、1回目の脱皮をすると2齢幼虫に、2回目の脱皮をすると3齢幼虫になり、4回目の脱皮をすると終齢(5齢)幼虫になります。
1~4齢幼虫は鳥の糞のような模様をしており、終齢(5齢)幼虫は緑色の幼虫になります。それぞれの見た目の違いは以下の通りです。
1~4齢幼虫
1~4齢幼虫はどれも鳥の糞のような模様をしていますが、よく見ると模様が異なります。キアゲハは黄色い点が複数あることで見分けることができます。アゲハチョウとクロアゲハ、カラスアゲハは似ていますが、カラスアゲハは最も黄色味が強く、アゲハチョウは黄色味が弱いことで見分けることができます。
終齢(5齢)幼虫
次に終齢(5齢)幼虫の違いです。キアゲハは独特の黒い筋が複数あるので、容易に見分けることができます。アゲハチョウとクロアゲハ、カラスアゲハ見た目が似ていますが、クロアゲハは背中に黒い筋があり、カラスアゲハは頭に模様があることから、見分けることができます。
アゲハチョウとクロアゲハの幼虫の見た目の違いについて詳細解説
平地で最もよく見られるアゲハは、アゲハチョウ(ナミアゲハ)とクロアゲハです。平地でミカン科の植物の葉っぱでアゲハの幼虫を見つけたら、アゲハチョウとクロアゲハの可能性が高いと言えます。
この2種類の幼虫の違いをしっかりと押さえておくと役に立ちますので、アゲハチョウとクロアゲハの幼虫の違いを詳しく紹介します。
アゲハとクロアゲハの1齢から4齢幼虫の見分け方
- 1齢から4齢幼虫までは、アゲハチョウの方が背中の白帯模様が明確であり、クロアゲハのほうが全体的に黄緑色っぽい色をしている。
アゲハとクロアゲハの5齢(終齢)幼虫の見分け方
- 5齢(終齢)幼虫は、クロアゲハは背中の黒い線が太い。
ツノの色の違い
アゲハの幼虫はツノの色にも違いがあります。アゲハチョウやキアゲハ、カラスアゲハは黄色いツノですが、クロアゲハは赤いツノを持っています。
アゲハの幼虫のエサの違い
アゲハの幼虫は種類によってエサが異なります。幼虫のエサは下表の通りです。
種類 | 幼虫のエサ |
アゲハチョウ(ナミアゲハ) | ミカン科の植物(ミカンやヘンルーダ、カラタチなど) |
クロアゲハ | ミカン科の植物(ミカンやヘンルーダ、カラタチなど) |
カラスアゲハ | ミカン科の植物(サンショウやヘンルーダなど) |
キアゲハ | セリ科の植物(パセリなど) |
アゲハチョウとクロアゲハ、カラスアゲハの幼虫はどれもミカン科の植物をエサとします。その中で、アゲハチョウとクロアゲハは、栽培ミカンやヘンルーダ、カラタチなどの植物によく幼虫が付きます。一方で、カラスアゲハはサンショウやヘンルーダなど幼虫がよく付きます。
この4種類の中では、キアゲハの幼虫だけがミカン科の植物を食べません。キアゲハの幼虫はパセリなどのセリ科の植物を食べます。ホームセンターなどで売っているパセリを育てると、キアゲハが卵を産みに来ます。
【詳細】アゲハチョウ(ナミアゲハ)の幼虫の紹介
ナミアゲハは北海道から九州、南西諸島、小笠原諸島まで全国に広く分布する蝶で、平地から低山地に多く生息します。また、日本蝶類図説に記載のある通り、春に成虫となる春型と夏に成虫となる夏型で大きさや模様が異なる特徴があり、春型の方が小型で、外縁黒帯の幅が狭いなどの特徴があります。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物を食べます
孵化して間もないアゲハチョウの幼虫です。大きさは数ミリ程度しかなく、見つけるのも大変です。産まれた直後は黒色の幼虫で、毛が生えています。
孵化してしばらくは上の写真のように黒色と白色で、鳥の糞のような模様をしています。これは、鳥の糞に擬態することで鳥の捕食から身を守っていると言われています。
その後、脱皮して大きくなると、上の写真のように緑色の幼虫になります。この頃になると非常に食欲旺盛で、大量の葉っぱをたべるようになります。
【詳細】クロアゲハの幼虫の紹介
クロアゲハは、都心部でも見かける機会の多いアゲハチョウ科の蝶です。分布も広く、本州、四国、九州、沖縄で普通に見ることができます。分布の北限は東北地方北部であり、青森県では稀で、北海道には生息していません。沖縄に生息する個体は沖縄・八重山亜種とされていて、赤斑がよく発達する特徴があります。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物を食べます
孵化して間もないクロアゲハの小さな幼虫です。体長は数mm程度です。
脱皮をして少し大きくなったクロアゲハの幼虫です。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
ナミアゲハやカラスアゲハの幼虫の臭角は黄色ですが、クロアゲハは赤色です。
脱皮を繰り返すと緑色の幼虫になります。この頃になると体も大きくなり、食べる葉の量も非常に多くなります。蛹までもうすぐです。
【詳細】カラスアゲハの幼虫の紹介
カラスアゲハは、クロアゲハほどではありませんが都心部でも比較的見かける機会の多いアゲハチョウ科の蝶です。分布も広く、北海道、本州、四国、九州で普通に見ることができます。
カラスアゲハとオキナワカラスアゲハ、ヤエヤマカラスアゲハは以前は同種として扱われていましたが、交配実験等で詳細な分類の研究がなされ、その結果から現在は別種とされています。
ミヤマカラスアゲハほどではないものの、翅の表面の青緑色に輝く鱗粉が美しい蝶です。季節型がはっきりしており、春型は小型で夏型は大型となります。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物の葉を食べます。
ミカン科の植物であるヘンルーダで見つけたカラスアゲハの卵です。
卵から孵化した直後のカラスアゲハの幼虫は大きさが数mm程度しかありません。
何度か脱皮を繰り返して大きくなったカラスアゲハの幼虫です。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
脱皮を繰り返すと緑色の幼虫になります。
【詳細】キアゲハの幼虫の紹介
キアゲハも都心部の公園などでも普通に見ることができ、北海道から九州まで広い範囲に生息しています。沖縄にも過去に観察した記録は3例ありますが、定着はしていません。
ナミアゲハと見た目はよく似ていますが、キアゲハは滑空するように飛ぶ特徴があり、慣れてくると飛び方や模様の違いにより飛んでいても見分けることができるようになります。
アゲハチョウの幼虫はミカン科の植物の葉を食べるのに対して、キアゲハの幼虫はパセリ等のセリ科の植物を食べます。
キアゲハの幼虫はパセリ等のセリ科の植物を食べます。この個体はパセリに産卵して孵化しました。
卵から孵化して1~3齢幼虫までは鳥の糞のような模様をしています。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
何度も脱皮を繰り返して4~5齢の幼虫となると、緑色の特有の模様となります。この頃になると食欲が旺盛で、あっという間に植物の葉がなくなっていきます。
蛹の色は緑色・茶色のどちらかになります。
次に読むべきオススメの記事はこちら!
この記事ではアゲハ蝶の幼虫の種類と見分け方を詳しく解説しました。このサイトではこの記事で紹介した内容以外にも、アゲハ蝶の幼虫について多くの解説記事を執筆しています。以下の記事も是非ご覧ください!
コメント