アオスジアゲハは都心にも普通に生息している普通種ですが、青い線が美しい蝶で、”アオスジアゲハが一番好きな蝶”という人も多いと思います。
この記事では、これまでに観察したアオスジアゲハの写真を紹介します。
アオスジアゲハの紹介
分布 | 本州・四国・九州・沖縄 |
生息環境 | 平地・山地 |
発生回数 | 年3~4回程度 |
成虫が見られる時期 | 5月から10月 |
越冬の状態 | 蛹で越冬 |
食草 | クスノキ、タブノキなど |
亜種 | なし |
アオスジアゲハの幼虫はクスノキやタブノキを食べ、街路樹や都心の公園に植栽されるため、都心の公園等でよく見られます。季節型があり、春型は夏型と比べて小型になる傾向があります。別名でクロタイマイと呼ばれることもあります。生息地は本州から沖縄であり、北海道には生息していません。
敏速に飛翔するため、飛翔中の撮影は困難を極めますが、花をよく訪れるため、放花中の撮影はそれほど難しくありません。地面で吸水する光景もよく見られます。
アオスジアゲハに似た蝶:ミカドアゲハ
見た目が似ている蝶として、日本にはミカドアゲハが生息しています。ですが、よく見ると翅の模様は大きく異なりますので、よく観察すれば見間違えることはありません。以下にアオスジアゲハとミカドアゲハの写真を並べます。左がアオスジアゲハで、右がミカドアゲハです。
また、ミカドアゲハは生息地が限定的で、生息数もアオスジアゲハと比べると少ないです。
日本蝶類図説(1904年の図鑑)
1904年に出版された日本蝶類図説(宮島幹之助)という図鑑があります。ここに記載されているアオスジアゲハを紹介します。アオスジアゲハは昔は”クロタイマイ”と呼ばれていました。
現在は北海道には生息していないと考えられていますが、1904年『日本蝶類図説』(宮島幹之助)では、産地として“北海道(稀)”が記載されています。
翅表面は黒く、前後翅を貫きて列べる淡緑色方斑あり。此方斑は両端に至るに従ひ、狭小なり。後翅前縁の方斑は蒼白色にして、且つ外縁には淡緑色の半月紋列あるを常とす。裏面は表面よりも色淡く、後翅方斑の周辺に黒色及び淡紅色の斑点あり。其中肛角にある点は最大なり。雄にては雌よりるも其翅細長なり。早春にあらはるるものは概して形小さく敏捷なり。
●期節 五月ー九月
●産地 北海道(稀)、本島、四国、九州、琉球(普通)
●仔虫 緑色にしていぬくす等樟科植物の葉を食し體形葉と酷似す。蛹は紡綞状なり
宮島幹之助(1904)『日本蝶類図説』.
アオスジアゲハの世界的な分布
アオスジアゲハは南方系の蝶で、東洋熱帯に広く生息します。東アジアや東南アジア、オーストラリア等に分布し、日本では本州以南に生息し、寒冷地には生息しません。
アオスジアゲハの写真集
標本写真
東京都文京区での生態写真
アオスジアゲハは東京都で最も普通に見られる蝶の1種です。都心部の公園などで空を俊敏に飛翔する青いアゲハチョウを見かける機会が多くあります。青い線が美しく、一度見ると印象に残る蝶です。
埼玉県飯能市での生態写真
埼玉県飯能市で観察したアオスジアゲハです。飛び方は非常に俊敏ですが、この写真のように花をよく訪れるため、花の蜜を吸うタイミングが撮影のチャンスです。
愛知県新城市での生態写真
愛知県新城市のアオスジアゲハです。アオスジアゲハは花の蜜をよく吸いますが、この写真のように地面の水分を吸う姿もよく目撃します。野外のプールに吸水にくるアオスジアゲハを目にすることもあります。奥に写るのはアゲハチョウ(ナミアゲハ)です。
沖縄県石垣市での生態写真
アオスジアゲハは沖縄県でも普通に見られます。この写真は沖縄県石垣島のアオスジアゲハです。アオスジアゲハは南方の蝶で、北海道には生息せず、東北地方は生息地が海岸沿いに限られます。沖縄県では見た目が似ているミカドアゲハも生息していますので、同定には注意が必要です。八重山諸島に生息するアオスジアゲハは亜種とされることもあります。
海外での生態写真
中国の周庄でアオスジアゲハを観察しました。日本に生息するアオスジアゲハと比較すると、後翅の青色の筋が異なります。
アオスジアゲハの卵・幼虫・蛹
アオスジアゲハの卵
アオスジアゲハはクスノキやタブノキなどのクスノキ科の植物に卵が産みつけられます。産卵直後の卵は下の写真のように美しい黄緑色をしています。大きさは直径1mm程度で、非常に小さく見つけるのは苦労します。
下の写真は、孵化しなかった卵の写真です。寄生虫が出てくることもなかったため、寄生されているわけではないようです。
アオスジアゲハの幼虫
アオスジアゲハの幼虫はクスノキ科の植物の葉を食べますので、クスノキ科の植物の葉をよく見ると幼虫を見つけることができます。幼虫は5月から10月頃まで見ることができます。
アオスジアゲハの幼虫は、4回脱皮して徐々に大きくなります。1齢幼虫は黒褐色をしており、脱皮を繰り返すことで淡色となり、4齢幼虫では暗黄色、終齢幼虫で鮮美な緑色となります。
2齢幼虫
1齢幼虫は黒色をしていますが、徐々に緑色に変色をしていきます。アオスジアゲハの特徴であるツノも見えます。
4齢幼虫
下の写真の幼虫は、3回脱皮した後の4齢幼虫です。黒い突起が3対6本あるのが特徴です。
5齢(終齢)幼虫
下の写真の幼虫は、4回脱皮した後の5齢(終齢)幼虫です。黒い突起が無くなり、偽の目玉模様に変わります。終齢幼虫は40~45mm程度となり、淡緑色となります。
アオスジアゲハとミカドアゲハの幼虫の違い・見分け方
アオスジアゲハと見た目がよく似た蝶の幼虫としては、ミカドアゲハがいます。ミカドアゲハとの一番の違いは、5齢(終齢)幼虫の目玉模様が、ミカドアゲハの幼虫の方が丸く、より目玉に近い模様であることで見分けることができます。
また、アオスジアゲハの幼虫がクスノキ科の葉っぱを食べるのに対して、ミカドアゲハの幼虫はモクレン科の葉っぱを食べるため、幼虫を発見した場所でも見分けることができます。
アオスジアゲハの蛹
5齢(終齢)幼虫の後はアオスジアゲハは蛹になります。アオスジアゲハの蛹は綺麗な黄緑色をしています。アオスジアゲハは蛹で越冬しますので、冬季でも蛹を観察することができます。
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