磐梯山はゼフィルスの宝庫と呼ばれるほど、多くのゼフィルス(シジミチョウ科の1群の総称)が生息しています。関東からもアクセスがしやすいため、蝶が好きな人にとっては人気のある場所です。
私は2015年からゼフィルスを観察するため、磐梯山で継続的に観察を続けてきました。この間に多くのゼフィルスと出会いました。この記事では、これまでに磐梯山周辺で観察した蝶を紹介します。
表磐梯の蝶
磐梯山の南麓である表磐梯には多くのゼフィルス(ミドリシジミの一群)が生息しています。これまでに観察できた蝶を紹介します。
ジョウザンミドリシジミ
これまでの経験上、表磐梯で最もよく見られるゼフィルスはこのジョウザンミドリシジミです。特にこの場所では非常に多くのジョウザンミドリシジミが乱舞する姿が見られます。ジョウザンミドリシジミは午前中に積極的に活動(占有行動)を行う特徴があり、この日は8時頃から占有行動を始めました。
エゾミドリシジミ
ジョウザンミドリシジミが午前中に占有行動を行うのに対して、エゾミドリシジミは午後に占有行動を行います。この2種の時間別のすみ分けは正確で、ジョウザンミドリシジミは午後になると全く姿が見えなくなります。そして、午後になると全く同じ場所でエゾミドリシジミが占有行動をとります。
この日も午後になるとエゾミドリシジミが飛び始めました。ですが、ジョウザンミドリシジミと比べてエゾミドリシジミの方が若干高い場所で占有行動をとる習性があり、近くにとまってくれないためなかなか良い写真は残せませんでした
ハヤシミドリシジミ
アイノミドリシジミ
オオミドリシジミ
ウラナミアカシジミ
この日、表磐梯に到着してまず最初に見つけたゼフィルスはウラナミアカシジミでした。現地に到着したのが6時頃で、1時間程度歩いていると足元に止まっているウラナミアカシジミを発見しました。ウラナミアカシジミは東京周辺でも観察できる蝶で、特段珍しい蝶ではありませんが、この場所で観察したのはこの時が初めてでした。
平地では5月下旬頃から6月頃まで見られる蝶で、7月になると姿を消してしまうことが多いのですが、磐梯山のような山地ではこの時期(7月下旬)でもまだ見ることができます。
この日は2頭のウラナミアカシジミを観察することができました。ウラナミアカシジミは夕方ごろに活発に活動する蝶で、この時はじっと下草に止まっていました。
アカシジミ
アカシジミも磐梯では比較的よく見られるゼフィルスです。
ウスイロオナガシジミ
ウスイロオナガシジミはそれほど数は多くありませんが、磐梯で観察することができます。
ミズイロオナガシジミ
ミズイロオナガシジミは、ジョウザンミドリシジミと並んで磐梯で多く観察できるゼフィルスの1種です。夕方ごろになると多くのミズイロオナガシジミと出会うことができます。
ウラミスジシジミ
2023年はウラミスジシジミは多く観察できました。午前7時に現地に到着して、その後30分程度の間に4頭のウラミスジシジミが観察できました。ウラミスジシジミは地域による変異が大きい蝶でケルキボルス型とシグナタ型の2種類がいます。磐梯山で観察した個体はケルキボルス型のウラミスジシジミでした。
ウラクロシジミ
17時頃になると、銀色のゼフィルスがチラチラと飛び始めました。銀色のシジミチョウ科の蝶と言えばウラクロシジミです。かなり離れた場所に止まっていたため、良い写真を残すことができず、証拠写真程度となってしまいました。
裏磐梯の蝶
ジョウザンミドリシジミ
ジョウザンミドリシジミは磐梯山周辺で最も普通に見られるゼフィルスの1種です。表磐梯ではこれまでに非常に多くのジョウザンミドリシジミが観察できていますので、裏磐梯でもジョウザンミドリシジミには最低限出会いたいと考えていました。そして期待通りに出会うことができました。今回発見した生息地では、それほど数は多くありませんでしたが、何頭かのジョウザンミドリシジミが占有行動をしていました。
ジョウザンミドリシジミは比較的低い場所で占有行動をとる特徴がありますが、この日はやや高い場所で占有行動をとっており、なかなか撮影することができません。ですが、その中の1頭が下に降りてきてくれてました。翅の表を撮影したいと思って期待していましたが、残念ながら翅を開くことなく、また高い場所に戻っていってしまいました。
アイノミドリシジミ
続いてアイノミドリシジミを紹介します。アイノミドリシジミは表磐梯で1度観察したことがありましたが、多産する生息地はまだ見つけられていませんでした。午前中に占有行動をとっているゼフィルスを発見し、最初はジョウザンミドリシジミだと思っていました。ですが、以下2点の理由により、ジョウザンミドリシジミではなく、アイノミドリシジミではないかと推定しました。
- ジョウザンミドリシジミが生息する環境よりも薄暗い場所であったこと
- かなり高い場所で占有行動をとっていること
高い場所で占有行動をとっているので、良い写真を撮影することはできませんでしたが、それでも何とか撮影した写真を見てみるとジョウザンミドリシジミではなくアイノミドリシジミであるという確認ができました。この場所は非常に多くのアイノミドリシジミが占有行動をとっており、磐梯山周辺でアイノミドリシジミが多産する場所をようやく見つけることができました。
アカシジミ
続いて紹介するのはアカシジミです。アカシジミは平地性ゼフィルスの1種で、東京都周辺でも見ることができる蝶です。この日は葉の上の止まるアカシジミを偶然発見することができました。このアカシジミを見ると、翅の一部が破れていることがわかると思います。これは蝶の天敵である鳥に食べられたと推定されます。実はこの破れている箇所には偽の頭部(尾状突起や偽の目の模様)があり、鳥にはそちらを攻撃させ、胴体を守るための役割を果たしているのです。今回のこの写真の損傷具合を見ると、偽の頭部がしっかりと機能していることが見て取れます。
ミヤマカラスシジミ
農地脇の道を歩いていると、偶然ミヤマカラスシジミを発見しました。極めて狭い場所に密集して生息している様子で、その場所では多くの個体に出会えましたが、少し離れるととたんに観察することができなくなりました。ミヤマカラスシジミを福島県内で観察したのは今回が初めてでした。新たな生息地を発見することができ、満足の結果となりました。
アサギマダラ
アサギマダラは、渡りの蝶として有名で、蝶に特段興味がなくてもその名を一度は聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。長距離移動をする蝶で、日本の様々な場所で観察することができます。首都圏でも観察することができる蝶です。
飛び方がゆったりしていて優雅で、翅の模様も美しく、大型でインパクトもあることから人気のある蝶です。私自身も、アサギマダラは好きな蝶の1種です。この日は、花で吸蜜するアサギマダラを何頭か観察することができました。
ウラギンヒョウモン
都会で見られるヒョウモンチョウ類はツマグロヒョウモンが最も一般的ですが、ここではツマグロヒョウモンは生息しておらず、最も普通に見られたヒョウモンチョウ類はウラギンヒョウモンでした。
日の当たる明るい場所で、各種の花を訪れるウラギンヒョウモンを何頭か観察することができました。
オオミスジ
オオミスジは個人的に出会う機会が少ない蝶です。以前は2015年に表磐梯でオオミスジを観察していて、それ以来の再開です。撮影しやすい場所に止まってくれなかったため、あまり良い写真を残すことはできませんでした。
ミスジチョウ
オオミスジに続いてミスジチョウも観察することができました。都会ではミスジチョウ系ではコミスジが最も一般的に見られますが、この場所ではコミスジは1頭も観察することができませんでした。その代わりに、ミスジチョウを何頭か観察することができました。
サカハチチョウ
サカハチチョウは春に見られる個体(春型)と夏に見られる個体(夏型)で翅の模様が異なります。この時に見られたのは夏型の個体でした。サカハチチョウは生息数が多く、裏磐梯での蝶の観察を通じてかなりの数の個体を観察することができました。
クジャクチョウ
2日間の観察の中で1頭だけではありましたが、クジャクチョウも観察することができました。山地や高原で見られることが多い蝶ですので、普段の生活の中では観察する機会の少ない蝶です。翅の裏側はほとんど模様がなく地味ですが、表は色鮮やかでインパクトの強い模様をしています。
コムラサキ
コムラサキは都心でも見ることができる蝶です。コムラサキのオスは翅の表が紫色をしていて、見る角度によって紫色が鮮やかになります。この写真はオスですが、撮影した角度があまり良くなく、紫色が少ししか出ませんでした。地面の水を吸うコムラサキを観察することができました。
ルリタテハ
ルリタテハも都心で観察することができる蝶です。独特の模様をしており、似た種は日本には生息していませんので見分けるのが簡単な蝶です。今回の観察では、1頭のルリタテハを観察・撮影することができました。
その他磐梯山周辺の蝶
ムモンアカシジミ
磐梯山からは少し距離がありますが、福島県川俣町にムモンアカシジミを探しに行きました。10時頃に現地に到着して探し始めたところ、開始から30分程度でムモンアカシジミを見つけました。環境は以下の写真の通りです。
滞在時間は2時間弱で、観察できたのはこの1頭だけでした。川俣町はムモンアカシジミが多産する場所で有名です。多産するポイントを見つけるのには、時間が足りませんでした。
コメント