日本に生息する外来種の蝶~ホソオチョウとアカボシゴマダラ~

蝶の生態他
こんにちは!Nao(Xアカウント:@fujimidori123)です!

日本には「ホソオチョウ」と「アカボシゴマダラ」という2種類の外来種の蝶が生息しています。この2種類の蝶は、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき「生態系被害防止外来種リスト」に指定されています。このうち、アカボシゴマダラ大陸亜種については同法に基づき特定外来生物に指定されていて、輸入、飼養や運搬 、野外に放つことが原則として禁止されています。

この記事では、この外来種2種類について紹介をします。

日本に生息する外来種の蝶
  • ホソオチョウ(アゲハチョウ科)
  • アカボシゴマダラ(タテハチョウ科)

ホソオチョウ

2009年8月25日岐阜県揖斐川市で観察したホソオチョウ

ホソオチョウの紹介

ホソオチョウは上記の通り、元々日本に生息していなかった外来種です。1978年に東京都で最初に確認され、その後日本の各地で発生が確認されました。増えた理由は”人為的な放蝶”、つまり人の手によって韓国(推定)から持ってこられました。その名の通り細い尾が特徴で、飛び方は非常に緩やかです。幼虫の食草はウマノスズクサです。在来種であるジャコウアゲハの幼虫と同じ食草であるため、その競合が懸念されています。

過去、蝶の観察の際に出会った方が内緒話として話してくれたのですが、その方は”ホソオチョウを日本に持ってきた人を知っている”と言っていました。その発言が本当かどうかは不明ですが、元々生息していなかった蝶がいきなり日本で増えたことを考えると、人為的に持ち込まれたことは間違いないと思われます。

現在は、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき「生態系被害防止外来種リスト」に入っています。

  • 食草:ウマノスズクサ
  • 成虫が見られる時期:4月頃から10月頃まで
  • 生息環境:河川敷など

ホソオチョウの成虫の写真

私は、2009年8月25日と2011年8月18日に岐阜県の揖斐川町でホソオチョウを観察しましたので、以下ではその時に観察できたホソオチョウを紹介します。

岐阜県揖斐川町にホソオチョウが生息するという情報を入手しましたので、その周辺を歩いてみることにしました。

生息環境は以下写真の感じです。

生息環境(揖斐川河川敷)

ここで、数頭のホソオチョウを観察することができました。他に似た種はいないため、見た瞬間ホソオチョウとわかります。色・模様も独特ですし、何よりもこんな飛び方をする蝶はこの時期・この場所に他にはいません。非常に緩やかにふわふわと浮いているように飛んでいるホソオチョウをすぐに見るけることができました。

初めて見る蝶ではありましたが、やはり外来種ということもあり、正直そこまで大きな感動を感じることはできませんでした。2009年8月25日と2011年8月18日の2日間で観察したホソオチョウの写真を何枚か紹介します。黒っぽいのが♀、白っぽいのが♂になります。

2009年8月25日ホソオチョウ
2009年8月25日ホソオチョウ
2011年8月18日ホソオチョウ

アカボシゴマダラ

2016年9月25日に東京都練馬区で観察したアカボシゴマダラ夏型

アカボシゴマダラの紹介

関東に住んでいる人にとって、アカボシゴマダラは最も身近な蝶の1種です。ですが、このアカボシゴマダラは昔から関東に生息していた蝶ではありません。関東に生息しているアカボシゴマダラは、人為的に持ち込まれた外来種であり、原産地は中国大陸とされています。

1995年に埼玉県で、1998年に神奈川県で発見されて以降、分布を広げ、現在では南関東を中心に山梨などでも確認されています。現在は、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき「生態系被害防止外来種リスト」に指定されていて、採取等が禁止されています。

一方で、日本には元来、奄美大島に在来種のアカボシゴマダラが生息しています。個体数が少ないことから、環境省レッドリスト2020では準絶滅危惧(NT)に分類されています。

  • 食草:クワノハエノキ、エノキなどのニレ科
  • 分布:奄美大島周辺(在来種)、関東周辺(外来種)
  • 成虫が見られる時期:3月頃から11月頃まで
  • 生息環境:農地や民家、低山地など

アカボシゴマダラの成虫の写真

2017年5月20日に東京都千代田区で観察したアカボシゴマダラ春型
2016年9月25日に東京都練馬区で観察したアカボシゴマダラ夏型

関東に生息する外来種のアカボシゴマダラは季節的変異(季節型)が顕著で、春型はアカボシゴマダラの特徴である赤紋が消失します。ここで紹介した写真では、一番上の写真が春型で、下の2枚が夏型です。

一方で、奄美大島に生息するアカボシゴマダラは季節的変異はありません。

アカボシゴマダラの卵の写真

アカボシゴマダラの卵

アカボシゴマダラの卵です。ニレ科の植物に産卵をします。

(参考)日本蝶類図説(1904年の図鑑)に掲載されているアカボシゴマダラ

1904年に出版された日本蝶類図説(宮島幹之助)という図鑑があります。ここに記載されているアカボシゴマダラを紹介します。

宮島幹之助(1904)『日本蝶類図説』.

前種(ゴマダラチョウ)に酷似すれど後翅に赤色紋あるを以て区別す。翅は長く黒色を呈し蒼白色の紋數多あり。翅の基部にある紋は長く、或は方形なれども、外縁の二列の小紋は圓し。後翅の外縁に六個の赤色紋あり。中央の二紋は最大にして環状を呈し、肛角に近き二紋は小さくして中にある黒點微かなり。裏面は略表面に同じく、黒色部は褐色を帯ぶ。雌雄によりて色彩紋様異ることなし。琉球には普通にして高く樹間に飛ぶ。

●期節 七、八月

●産地 琉球

●仔虫食草等未詳

宮島幹之助(1904)『日本蝶類図説』.

日本蝶類図説では「琉球には普通にして高く樹間に飛ぶ」と記載されています。アカボシゴマダラを沖縄県で最初に記録したのはFRITZEという人物で、1891年に頃には沖縄本島で稀ならざる種類であったと記録されています。これらのことから、1900年頃には沖縄県でアカボシゴマダラが普通に生息していたことが推測できます。

一方で、現在は沖縄県にはアカボシゴマダラは生息していません。1960年ごろの図鑑からも、アカボシゴマダラの生息地として沖縄が消されています。100年程前には沖縄に普通に生息していたと思われるアカボシゴマダラが現在は全く見られなくなったのは非常に興味深い問題です。

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