- ギフチョウの卵や幼虫を見つけたい
- ギフチョウの卵や幼虫を育てたい
この記事では、実際のギフチョウの飼育記録を基に、ギフチョウの卵や幼虫の見つけ方や育て方を解説します。
ギフチョウの紹介
分布 | 本州 |
生息環境 | 平地、山地 |
発生回数 | 年1回 |
成虫が見られる時期 | 4月頃 |
越冬の状態 | 蛹で越冬 |
食草 | カンアオイ類、ウスバサイシンなど |
亜種 | なし |
ソメイヨシノの開花とほぼ同時期に成虫が発生し、春にだけ見られる日本を代表する蝶の1種(日本の固有種)です。「春の女神(スプリング・エフェメラル)」と呼ばれ、度々メディアにも登場します。
明治16年(1883年)に初代名和昆虫研究所所長の名和靖さんが学会に紹介し、岐阜県でこの蝶が得られたため、ギフチョウと名付けられました。昔は「ダンダラチョウ」とも呼ばれていました。
成虫は10時頃から飛翔を開始し、カタクリやタチツボスミレ等の丈の低い花を好んで吸蜜します。
高度経済成長期以降、急激に数を減らしており、1973年頃までは八王子市高尾山一帯の小仏峠・景信山・御殿峠に生息するなど、南関東でも広い範囲で生息していましたが、現在は南関東では神奈川県の一部にしか生息していません。
1980年代に出版された「ギフチョウ88か所めぐり(蝶研出版)」という本では、以下の通り紹介されています。
東京都のギフチョウといえば、今ではほとんど絶滅してしまったが、1973年頃までは、八王子市高尾山一帯の小仏峠・影信山・御殿峠などで採集されている。
今からもう20年以上も前の話になるが、私が中学1,2年生の頃、ギフチョウ採集といえば、裏高尾か小倉山と決めており、春休みの天気の良い日には毎日のように通ったものである。日影のバス停を降りると、バス道路をはずれ、川沿いにつけられた林道に入る。林道は奥の方で影信山・陣馬山への登山道と接続しているが、その分岐までの林道沿いがギフチョウのポイントである。当時は成虫を撮るのに一生懸命で、食草がどこにあるのかなどと考えたこともなかったが、ただ歩いているだけでも、日当たりの良い空間で遊ぶものや、林の縁に沿って飛ぶもの、本スミレの花に吸蜜にくるものなど、どこにでもといってよいほど、ギフチョウが見られた。経験の浅かった私にとっては、ギフチョウよりも、むしろ目立ちにくいコツバメの方が珍しい蝶に思えて夢中になって採集していた記憶が残っている。
当時のことを回想していると、ふと、昔採集していた場所が見たくなり、数年前の4月中旬、当地を訪ねてみた。しかし、その変貌ぶりには目をおおうものがあった。林道に入口にあった国鉄中央線をくぐるトンネルがつぶされているし、さらにその先も中央高速によってさえぎられている。やっとのことで林道にたどりつくと、奥の方は昔のたたずまいそのままで、川のせせらぎが心をいやしてくれた。しかし、「春の女神」は出迎えてはくれなかった。
蝶研出版(1989)『ギフチョウ88か所めぐり(第2版)』.
似た種として、ヒメギフチョウがいます。ヒメギフチョウと生息域がはっきりと分かれており、おおむねフォッサマグナより西では本種が、東ではヒメギフチョウが生息します。長野県の白馬村をはじめとする数か所では両種が混在して生息しています(生息域の境界線を「リュードルフィア線」と呼ぶ)。
警戒心があまり高くなく、近づいても逃げないことがあります。
ギフチョウの卵と幼虫の見つけ方
卵や幼虫を探す時期
- 成虫:3月下旬~4月頃
- 卵 :4月中旬~4月下旬頃
- 幼虫:5月~6月上旬頃
- 蛹 :6月中旬~翌年3月中旬頃
ギフチョウはこのような周期で、成虫⇒卵⇒幼虫⇒蛹⇒成虫と命を繋いでいきます。
そのため、卵は4月頃、幼虫は5月頃に探しに行くようにしましょう。
卵や幼虫を探す場所
卵や幼虫を探すためには、まずギフチョウが生息する場所を特定することから始まります。ギフチョウの成虫は3月下旬~4月頃に見られますので、この時期にギフチョウの生息地を探し当てましょう。
ギフチョウの生息地が特定できたら、次はギフチョウが卵を産む植物を探します。ギフチョウはカンアオイに卵を産みますので、カンアオイを探しましょう。
ギフチョウは、カンアオイの裏側に卵を産む習性がありますので、カンアオイが見つけたら葉を裏返してみましょう。そうすると、ギフチョウの卵が見つかることがあります。ギフチョウは基本的に8~10個の卵塊として産卵します。卵の直径は1mm程度で、淡い緑色をしています。
基本的にはカンアオイの裏側に卵を産みますが、下の写真のようにカンアオイの表側に卵が産まれていることもあります。
幼虫はカンアオイの葉を食べて成長しますので、幼虫もカンアオイを確認することで見つけることができます。
ギフチョウの幼虫は、合計で4回脱皮して5齢幼虫になった後、蛹となります。ギフチョウの卵塊は概ね同じ時期に孵化して、その後3齢幼虫までは集団で生活します。3齢幼虫以降は、単独で生活します。
ギフチョウの食草と卵・幼虫の育て方
次に、ギフチョウの食草と卵・幼虫の育て方を解説します。
ギフチョウの食草
ギフチョウの幼虫はカンアオイという植物の葉を食べて成長します。ですが、カンアオイ属のカンアオイならば何でも食べるわけではありません。
ギフチョウは特定の種類のカンアオイを食草としますので、幼虫に与えるカンアオイの種類は注意するようにしましょう。
近畿以東では、ヒメカンアオイの仲間と、これと分類的に近いランショウアオイがギフチョウの主な食草です。
中国地方では、ミヤコアオイやサンヨウアオイ、タイリンアオイ、フタバアオイなどが食草です。
ギフチョウの卵の育て方
ギフチョウの卵は産卵後2週間程度で孵化します。その間は特段お世話は何もしなくて問題ありません。
ギフチョウの幼虫の育て方
1齢幼虫
2週間程度経つと、卵が孵化して、2mm程度の小さい幼虫が産まれます。ギフチョウの幼虫は毛が長いのが特徴です。1齢幼虫はまだカンアオイを食べる量は多くありませんが、成長に従って食べる量が劇的に増えていきますので、この頃からカンアオイの葉を十分な量確保しておくようにしましょう。
孵化直後は黄色い幼虫ですが、時間が経つと黒っぽくなってきます。
下の写真は孵化して1日後の5月8日AMギフチョウの幼虫です。体長は4mm程度となり、孵化から1日で倍になりました。
下の写真は、孵化して1日後の5月8日PMの様子です。見るたびに大きくなっているのがわかります。
下の写真は、孵化して2日後の5月9日の様子です。大きさは5mm程度です。
下の写真は孵化して4日後の5月11日のギフチョウの幼虫です。まもなく脱皮すると思われます。
2齢幼虫
下の写真は孵化して5日後の5月12日のギフチョウの幼虫です。脱皮して2齢幼虫となり、色が黒くなりました。大きさは6mm程度となりました。
下の写真は孵化してから7日後の幼虫です。脱皮前で休眠していると思われます。
3齢幼虫
脱皮して3齢幼虫になりました。下の写真は脱皮直後で、脱皮の殻が残っています。大きさはは8mm程度です。
下の写真は3齢幼虫になって丸1日経った幼虫です。急激に大きくなり、体長は11mm程度となりました。
下の写真は孵化してから10日が経過した幼虫です。頭に見える黄色いツノは臭覚です。大きさは15㎜程度となりました。この頃になると、カンアオイを食べる量がかなり増えてきます。
下の写真は脱皮前の3齢幼虫です。大きさは12mm程度です。
4齢幼虫
脱皮をして4齢幼虫になりました。この頃になると葉っぱを食べる量が一段と多くなります。大きさは16mm程度です。
下の写真は孵化してから14日後の幼虫です。大きさは23mm程度となり、一段と大きくなりました。カンアオイの食べる量がとても多く、食草の確保が大変です。1日に中程度の大きさの葉っぱ1枚以上食べるようになりました。
下の写真は脱皮に向けて休眠しているギフチョウの幼虫です。次は4回目の脱皮ですので、脱皮したら5齢(終齢)幼虫になります。
5齢(終齢)幼虫
4齢幼虫が脱皮をして5齢幼虫になりました。下の写真は脱皮直後のギフチョウの幼虫です。まだ頭や足が白色です。これから徐々に黒くなってきます。
脱皮から数時間経過して時のギフチョウの幼虫です。頭が黒色に変色しました。大きさは20mm程度です。
下の写真は終齢幼虫になって2日目の幼虫です。大きさは23mm程度です。
下の写真は終齢幼虫になって3日目の幼虫です。大きさは27mm程度です。日に日に大きくなっていきます。
下の写真は終齢幼虫になって4日目の幼虫です。大きさは30mm程度です。
下の写真は終齢幼虫になって5日目の幼虫です。大きさは30mm程度です。
下の写真は終齢幼虫になって6日目の幼虫です。大きさは30mm程度です。
下の写真は終齢幼虫になって7日目の幼虫です。大きさは30mm程度です。
このまま大きな変化はなく、6月4日まで5齢幼虫のままでした。5例幼虫の期間は約2週間でした。
前蛹から蛹へ
6月5日についに体が小さくなり前蛹となりました。まもなく蛹になります。
前蛹が脱皮して蛹となりました。まだ蛹になりたてで黄色をしています。
蛹になって丸1日経過したギフチョウの蛹が下の写真です。皮が固くなりました。
ギフチョウは、このまま次の春まで蛹の状態で過ごします。
幼虫を育てるために必要なカンアオイの葉の量
5齢幼虫になるとカンアオイの葉を食べる量が非常に多くなり、最終的には1齢幼虫から合計で葉っぱ10枚以上を食べました。ギフチョウの幼虫1頭につき、葉っぱは最低でも15枚は用意しておくことが必要です。
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