日本には見た目がよく似た種類の蝶が多く生息しており、フィールドで蝶を見つけても見分け方に悩むことがよくあります。そこで、この「蝶昆虫のWEBメディア」では、見た目がよく似た蝶の見分け方を解説しています。
この記事では、カラスシジミ・ミヤマカラスシジミ・ベニモンカラスシジミの違い・見分け方を紹介します。
3種の違い・見分け方
カラスシジミとミヤマカラスシジミとベニモンカラスシジミを見分けるポイントは、主に3点あります。
【1点目】後翅の外中央部の白線
- カラスシジミ:内側に寄る
- ミヤマカラスシジミ:外縁とほぼ平行
- ベニモンカラスシジミ:やや内側に寄る
【2点目】後翅の亜外縁黒点列
- カラスシジミ:弦月形
- ミヤマカラスシジミ:円形
- ベニモンカラスシジミ:弦月形
【1点目】後翅の肛門部付近の白線
- カラスシジミ:M字状
- ミヤマカラスシジミ:M字状にならない
- ベニモンカラスシジミ:M字状にならない
以下ではそれぞれの種の見分け方を写真で紹介します。
カラスシジミの違い・見分け方
ミヤマカラスシジミの違い・見分け方
ベニモンカラスシジミの違い・見分け方
以下では、それぞれの種の紹介します。
カラスシジミの紹介
分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
生息環境 | 山地 |
発生回数 | 年1回 |
成虫が見られる時期 | 6月から7月頃 |
越冬の状態 | 卵で越冬 |
食草 | ハルニレ、スモモなど |
亜種 | なし |
カラスシジミは成虫が年に1回発生し、6月から7月頃に見られます。北海道では平地から山地にかけて比較的良く見られます。本州以南では主に山地に生息します。日中は休んでいることが多く、主に夕方に活発に活動します。飛び方はとても俊敏で、栗の花やヒメジョオンの花などの蜜を吸います。
幼虫はハルニレやコブニレなどのニレ科のはを食べますが、スモモなどのバラ科の植物の葉を食べることもあります。
ミヤマカラスシジミの紹介
分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
生息環境 | 山地 |
発生回数 | 年1回 |
成虫が見られる時期 | 7月中旬から8月頃 |
越冬の状態 | 卵で越冬 |
食草 | コバノクロウメモドキ、クロツバラなど |
亜種 | なし |
ミヤマカラスシジミは主に低山地から山地に生息する日本固有の蝶です。成虫は7月中旬ごろから8月ごろまで見られ、年1回の発生です。北海道から九州まで広く分布し、場所によっては非常に多くの個体を観察することができます。ミヤマカラスシジミのオスは午後に活発に活動し、俊敏に飛んではよく花に止まります。
ベニモンカラスシジミの紹介
分布 | 本州と四国の一部地域 |
生息環境 | 主に山地 |
発生回数 | 年1回 |
成虫が見られる時期 | 5月下旬から6月頃 |
越冬の状態 | 卵 |
食草 | コバノクロウメモドキ、クロツバラなどのクロウメモドキ科 |
ベニモンカラスシジミは日本に大きく分けて以下の5つの分布域があります。どの生息域でも生息地は限定的で、観察するのが非常に難しい蝶で、各地で絶滅が危惧されています。1957年に愛媛県皿ヶ峰で初めて発見されましたが、現在は絶滅しています。
- 長野県南部と静岡県北西部
- 三重県西部と奈良県南東部
- 岡山県西部と広島県東部
- 愛媛県皿ヶ峰(現在は絶滅)
- 徳島県西部と高知県東部
成虫は年1回の発生で、5月下旬から6月頃にかけて見られます。活動時間帯は午前10時から11頃と、午後2時頃から3時頃で、緩やかに飛翔します。ウツギやヒメウツギなどの花の蜜を吸蜜する姿もよく見られます。
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