書籍「なぜ蝶は美しいのか(フィリップ・ハウス)」の中に、次の記載があります。
翅の紛らわしさがどんなものかは「人間」にはわかりづらいのですが、それはもともと人間ではなく、捕食動物たちを欺くために進化してきたからです。人間とは非常に異なった視覚世界を生きる捕食者たちは、人間なら見過ごしたり知覚すらできないような特徴を目印にしています。
鳥たちの「現実」は人間とはまるで違っているのです。昆虫の羽の模様は、そんな鳥の弱みにつけ込む生存戦略であるということをこれから説明していきましょう。
なぜ蝶は美しいのか(フィリップ・ハウス)
蝶の美しさは、捕食動物たちを欺くために進化してきた結果であると言えます。
私は2008年から蝶の観察を始めて、これまでに200種類違い蝶を観察してきました。
その経験を踏まえ、この記事では、天敵(捕食者)を欺くために進化した蝶の中で、私たち人間にとって”身近に見られる美しい蝶”や、”普段はなかなか目にすることができない宝石のように輝く蝶”の写真を紹介します。
エメラルドグリーンに輝く”森の宝石”と呼ばれる蝶
日本の森には、”森の宝石”と呼ばれるエメラルドグリーンに輝く蝶が生息しています。これらの蝶は”ゼフィルス”と呼ばれることもあります。生息地が局地的であり、成虫の活動期間が短いため、普段の生活の中では目にする機会が少ない蝶ですが、その美しさは日本の蝶の中でも別格ですので、興味を持った人は是非探しに出かけてみて下さい。
ジョウザンミドリシジミ
青く輝くジョウザンミドリシジミは、ゼフィルスの中では比較的生息数が多い蝶です。下草によく止まるため、この美しい翅をじっくりと観察することができることが多いです。福島県の磐梯山や青森県の岩木山などに多く生息しています。
メスアカミドリシジミ
エメラルドグリーンに輝くメスアカミドリシジミは、アイノミドリシジミと良く似ていて非常に美しい蝶です。幼虫はヤマザクラなどのサクラの葉を食べて成長するので、サクラの木があるところで見ることができます。
アイノミドリシジミ
アイノミドリシジミもエメラルドグリーンに輝く美しい蝶です。木の高いところをよく飛ぶため、美しいエメラルドグリーンを見ることができないことも多いです。富山県と石川県にまたがる医王山や福島県の磐梯山などに多く生息しています。
緑色に輝く黒いアゲハチョウ
日本には多くの黒いアゲハチョウが生息しており、その中には緑色に輝く種が何種類かいます。その中でとりわけ美しいのがミヤマカラスアゲハです。
ミヤマカラスアゲハ
ミヤマカラスアゲハは翅が青緑色に輝く非常に美しい蝶です。山地に生息する蝶で、平地では見る機会は少ないのですが、人気のある蝶ですので名前を知っている人も多いのではないでしょうか。時期や場所によって美しさが異なり、春に北海道で見られるミヤマカラスアゲハが最も美しいと言われています。
都会の空を飛ぶ美しい蝶
普段の生活の中で意識する機会は少ないかもしれませんが、都会の空にも美しい蝶が飛んでいます。その代表がアゲハチョウやアオスジアゲハです。
アオスジアゲハ
アオスジアゲハは都会の公園などでも普通に見られる蝶ですが、よく見ると青い筋がある美しい蝶です。花の蜜が好きで、吸蜜する姿を目撃する機会も多いと思います。幼虫がクスノキの葉を食べるため、都会の公園をはじめ、様々な場所で生息しています。
アゲハチョウ
日本で最も有名な蝶であるアゲハチョウは、よく見ると黄色と黒色の美しい模様をしています。
優雅に空を飛ぶ大型の蝶
登山などをしていると、優雅に大空を飛ぶ大型の蝶を目にすることがあります。アサギマダラという蝶です。アサギマダラは旅をする蝶で有名で、長距離を飛ぶため、日本の様々な場所で観察することができます。
アサギマダラ
アサギマダラは大型でインパクトがあり、滑空するような独特な飛び方をするため、1度目にすると印象に残る蝶です。標高の高い山で見かける機会が多い蝶ですが、平地でも見られることがあります。東京近郊であれば、筑波山で比較的良く見られます。
擬態する蝶
擬態する昆虫は多くいますが、蝶の中で擬態する代表的な種類はコノハチョウとイシガケチョウです。
コノハチョウ
コノハチョウはその名が示す通り、枯れた木の葉に擬態しています。翅を閉じると木の葉そっくりで、じっとしていると見つけるのはとても難しいです。
イシガケチョウ
イシガケチョウはその名が示す通り、石崖(石垣)に擬態する蝶です。石崖の上に翅を広げて止まっていると、背景に同化して見つけづらくなります。
美しい”蛇の目”を持つ蝶
日本には蛇の目を持つ蝶が多く生息しています。これらは、昔はジャノメチョウ科と呼ばれていましたが、現在はタテハチョウ科の中のジャノメチョウ亜科として分類されます。蛇の目を持つ蝶の中で、ウラジャノメは蛇の目の数が多い美しい蝶ですので紹介します。
ウラジャノメ
ウラジャノメは山地に生息するため、普段の生活で目にする機会は少ない蝶です。蛇の目がびっしりあり、インパクトのある模様をしています。この蛇の目の模様は、天敵である鳥を混乱させる役割があると言われています。蛇の目を持つ蝶は一般的には地味で蛾と間違えられることも多いのですが、良く見ると非常に美しい模様をしています。
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コメント
六甲山地周辺で「六甲山自然案内人の会」の活動をしております。
いつもクロアゲハとカラスアゲハの違いで、悩んでおりました。
このブログを見て、とても丁寧にわかり易く説明してくださり、よく理解することができました。感謝申し上げます。
当ブログをご覧いただきましてありがとうございます。当ブログを参考にしていただけたということで、大変嬉しく思っております。関西方面は自宅から離れているため、これまであまり蝶の観察に行けていませんが、関西方面に生息している蝶には大変興味があります。今後お世話になることがあるかもしれませんが、その際は是非よろしくお願いいたします。当ブログはまだ立ち上げて間もないこともあり、まだ情報量が不十分ではありますが、今後も有益な情報をお伝えできるよう情報の充実を図っていきます。今後とも是非よろしくお願いいたします。
昨日、神戸の須磨区白川台の山道で見かけた蝶で地面に止まる時は蛾のように羽を広げて、木に止まる時は羽の畳んで、色も青とか赤とか白地に、なんという蝶なのか調べて見ても分からない、写真は撮ってあるのですがこのサイトでは送れないのが残念です。きよねんはここでアサギマダラも見かけて写真を撮っています。
コメントありがとうございます。後ほどご記入いただいたメールアドレスにメールをお送りさせていただきますので、写真をお送りいただければ種を特定してご連絡させていただきます。