- クロアゲハの卵や幼虫、蛹を飼育してみたい。
- 蝶の幼虫を見つけたけど、クロアゲハの幼虫なのかを知りたい。
この記事では実際のクロアゲハの幼虫の飼育記録を基に、幼虫のエサや育て方、アゲハ類との幼虫の見分け方について解説をしていきます。
クロアゲハの紹介
クロアゲハは、都心部でも見かける機会の多いアゲハチョウ科の蝶です。分布も広く、本州、四国、九州、沖縄で普通に見ることができます。分布の北限は東北地方北部であり、青森県では稀で、北海道には生息していません。
沖縄に生息する個体は沖縄・八重山亜種とされていて、赤斑がよく発達する特徴があります。
- 食草:カラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物
- 分布:本州から沖縄まで広く分布
- 成虫が見られる時期:4月頃から10月頃まで
- 生息環境:農地や民家、公園など
日本蝶類図説(1904年の図鑑)に掲載されているクロアゲハ
1904年に出版された日本蝶類図説(宮島幹之助)という図鑑があります。ここでは以下の通りクロアゲハが紹介されています。
全翅黒く、雌雄にて其状を異にす。雄前翅地色は淡褐黒色なれど、近縁脉脉間條は濃黒色なり。後翅黒褐色にして肛角の青黒點は橙紅色の環にて圍まる。前縁には蒼白色の廣帯あり。裏面の赤色半月紋は外縁に列び、内縁に近きほど大なり。尾は短くして黒し。雌一般に雄よりも大きく淡色なり。後翅前縁の白帯なく、肛角赤色紋は大にして顕著なり。時として表面にも外縁の沿ひ赤色半月紋列あることありて、變化に富む。春生は夏生に比すれば翅小なり。
●期部 四月ー九月
●産地 本島、四国、九州、琉球
●仔虫 あげはの仔虫に類し、柑橘類の葉を食し、大なる帯蛹を作くる
宮島幹之助(1904)『日本蝶類図説』.
成虫の写真
クロアゲハの幼虫のエサと見つけ方
クロアゲハの幼虫はミカン科の植物の葉っぱを食べます。代表的なエサとしては、ミカンの葉やカラタチの葉、サンショウの葉などがあります。家の庭などにこれらの植物を植えておくと、クロアゲハが卵を産みに来ます。クロアゲハの幼虫の飼育を考えている人は、ミカン科の植物を育てるようにしましょう。
ミカン科の植物の中で最もオススメなのは「カラタチ」です。我が家では、カラタチやミカン、ヘンルーダといったミカン科の植物を植えていますが、「カラタチ」が一番人気で、多くのアゲハチョウが卵を産みに来ます。また、「カラタチ」は非常に強い植物で、枯れる心配が少ないのもメリットです。
「カラタチ」は、ホームセンターで取り扱っていない場合が多いので、通販が便利です。
以下がクロアゲハの食草の例です。
- ユズ
- ウンシュウミカン
- ナツミカン
- カラタチ
- サンショウ
- イヌザンショウ
- カラスザンショウ
- レモン
- キンカン
- ヘンルーダなど
クロアゲハの幼虫の飼い方・育て方とアゲハ蝶の幼虫との見分け方
クロアゲハは、卵から孵化したあと、基本的には4回脱皮を行って蛹になります。孵化直後の幼虫を1齢幼虫といい、1回脱皮をした後の幼虫を2齢幼虫といいます。その後は脱皮を繰り返すたびに、3齢幼虫、4齢幼虫、5齢幼虫となり、蛹になります。
クロアゲハの卵
産卵直後のクロアゲハの卵は美しい黄緑色をしています。直径は1mm程度と小さく、見つけるのは苦労します。
産卵から数日が経過して孵化直前になると、クロアゲハの卵は黒くなります。ここまで黒くなると、間もなく孵化して幼虫となります。
1齢幼虫
1齢幼虫は卵から孵化したばかりで、とても小さい幼虫です。頭とお尻にそれぞれ2本の角が生えているのが特徴です。この頃はまだ食べる量は少なく、葉っぱも少しずつしか食べません。少しはっぱを食べては休憩、というサイクルを繰り返していました。
アゲハチョウとクロアゲハの1齢幼虫を比較します。
1齢幼虫では違いを見分けるのが難しいのですが、以下の点が主な違いです
2齢幼虫
1齢幼虫が1度脱皮して2齢幼虫になりました。大きさは8mm程度となりました。2齢幼虫も頭とお尻にそれぞれ2本の角がまだ残っています。色は黄色っぽいのが特徴です。
アゲハチョウとクロアゲハの2齢幼虫を比較します。
2齢幼虫は以下の点が主な違いです。
3齢幼虫
2齢幼虫が脱皮して3齢幼虫になりました。大きさは10mm程度となりました。2齢幼虫の時に存在した頭とお尻の2本の角は消滅しつつあります。鳥の糞の模様にだいぶ近づいてきました。
アゲハチョウとクロアゲハの3齢幼虫を比較します。
3齢幼虫は以下の点が主な違いです。
4齢幼虫
3年幼虫が脱皮をして4齢幼虫になり、大きさは20mmを越える程度にまでなりました。この頃になると食欲が旺盛になってきて、用意した葉っぱがどんどんなくなっていきます。葉っぱの残量は毎日確認して、無くなりそうだったら新しい葉を与えるようにしましょう。緑色の終齢幼虫になるまでもうすぐです。
アゲハチョウとクロアゲハの4齢幼虫の違いは以下の通りです。
4齢幼虫は以下の点が主な違いです。
5齢(終齢)幼虫
4齢幼虫が脱皮してついに5齢(終齢)幼虫になりました。終齢幼虫になると、鳥の糞の模様だった幼虫は緑色に変身します。この頃になると、食べる量が一段と増え、葉っぱがすぐに丸裸になってしまいます。
蛹になる直前には、6㎝を越える大きさになりました。アゲハチョウの幼虫と比較しても、クロアゲハは大型です。
アゲハチョウとクロアゲハの終齢幼虫の違いは以下の通りです。
蛹(さなぎ)
5齢(終齢)幼虫になって約10日後に蛹になりました。蛹になる直前、幼虫は不要物を輩出するため下痢をします。その後、蛹になる場所を探して動き回り、場所が決まると蛹になる準備を始めます。この状態のことを、前蛹(ぜんよう)といいます。
前蛹になって1日程度経過すると、立派な蛹となります。蛹になったら、次のステップはいよいよ羽化です。
羽化が近くなると、蛹が突然黒くなります。下の写真のような状態になったら、間もなく羽化が始まります。クロアゲハの場合、蛹の期間は10日から2週間程度です。
クロアゲハの蛹は、茶色になることもあります。下の写真は茶色の蛹と緑色の蛹を並べたものです。
アゲハチョウとクロアゲハの蛹の違いは以下の通りです。
羽化して成虫に
一般的に、クロアゲハは蛹になって2週間程度で羽化します。成虫を飼育することは不可能ではないのですが、自由に飛び回る環境を作ることは難しいので、私は成虫になったら外に逃がします。この個体は無事に成虫になってくれました。
その他のアゲハ類の幼虫との見分け方
平地でよく見られるアゲハ類(アゲハチョウ、クロアゲハ、キアゲハ、カラスアゲハ)の幼虫の見分け方を解説をします。それらの主な幼虫の見分け方は次の通りです。
- クロアゲハの1齢から4齢幼虫は黄色味がある。
- クロアゲハの5齢幼虫は背中の黒い筋がある。
- クロアゲハの角は赤色。
1齢から4齢幼虫の見分け方
5齢(終齢)幼虫の見分け方
臭角の色の違い
クロアゲハの寿命(卵から成虫まで)
クロアゲハは大型のアゲハチョウ科の蝶で、アゲハチョウと比較して寿命は長い傾向があります。では、クロアゲハの寿命はどれぐらいなのでしょうか?
クロアゲハの寿命(卵から成虫まで)は2か月~3か月程度となります。卵から成虫までのそれぞれの形態の期間は以下の通りです。
- 卵の期間は約5日
- 幼虫の期間は約30日
- 蛹の期間は2週間程度
- 成虫の期間は2週間以上
- クロアゲハの寿命は2か月~3か月程度
(※第2化と第3化が卵から成虫になる一般的な期間であり、個体により異なります)
クロアゲハの寿命についての詳細は以下の記事をご覧ください。
(最後に)クロアゲハの幼虫と蛹の写真集
最後にクロアゲハの幼虫と蛹の写真を並べます。
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