今も昔も、多くの子供は虫が好きです。昔と比べると今の子供は虫捕りをしなくなってきていますが、それでも公園に行くと虫捕り網を持った子供を見かける機会があります。
この「蝶と昆虫のWEBメディア」では、主に蝶について取り扱っていますので、この記事では虫捕り・昆虫採集の面白さを紹介するとともに、蝶を代表例として採集できる場所の特徴について解説をします。
虫捕り・昆虫採集の面白さ
虫捕りの面白さは宝探しに似ていて、想像しなかった出会いがあることにあると思います。同じ場所に同じ時期に同じ時間に行っても、その時に見られる昆虫は違います。10年観察して初めて”この場所”で”この昆虫”を見つけた、ということもあります。これは人が作った世界の中では、なかなか起こらないことだと思います。
また、採集や観察した昆虫から学べることも非常に多くあります。
「なぜこの虫はこの場所に住んでいるんだろう?」
「どうやって昆虫は進化したんだろう?」
そういった疑問から、自然について学ぶことができます。人間も生き物です。昆虫の生態を突き詰めていくと世界の成り立ちを知ることにも繋がっていきます。
例えば、糸魚川・静岡構造線(フォッサマグナ)を境に、昆虫の種類が異なることが知られており、これらを知ることで日本の成り立ちを知ることに繋がります。
その意味では、例えば昆虫の生息地だけ情報を得て、その場所にピンポイントで行って昆虫を観察するだけでは本当の昆虫の楽しさには感じられません。昆虫採集や観察の本質は、自分の足で歩いて、「なぜこの虫はこの場所に住んでいるんだろう?」といったことを感じて自然から学んでいくことだと思います。
昆虫には1種類1種類全てに生態があり、食べ物や活動時間、活動場所などが異なります。これらの特徴を理解すると、自然への理解が深まるとともに、昆虫の楽しさや興味が増していきます。
この様に、虫捕り・昆虫採集というのは子供の教育にとって非常に重要であると思いますし、子供に限らず大人にとっても運動不足解消も兼ねて趣味としている人もいます。そういった方の参考となるよう、以下では”蝶”を例にして昆虫の生態や特徴を紹介します。
蝶が生息する場所・環境
蝶を見つける上でまず重要なのは、蝶の種類によって生息する場所が異なることを知ることです。蝶は「お花畑にいる」と思っている人が多いですが、お花畑にいるのは多くの蝶の中の一部だけです。
日本には様々な環境の自然があり、それぞれの環境に適応した蝶が生息しています。標高が高い場所や山地の中、里山、草原、都市の公園など、蝶はそれぞれの環境に特化しており、あらゆる環境に生息する蝶はいません。
標高が高い場所に生息する蝶
日本には標高が高い場所にのみ生息する蝶や、標高が高くても低くても生息する蝶がいます。
標高が高い場所にのみ生息する蝶は高山蝶と呼ばれることがあります。例えば、コヒオドシやミヤマモンキチョウ、ミヤマモンシロチョウ、ベニヒカゲなどがおり、その多くが採集禁止となっています。また、例えばコヒオドシは本州では標高が高い場所にのみ生息しますが、北海道に行くと平地にも生息する蝶もいます。
標高が高くても低くても生息する蝶としては、アサギマダラやキアゲハ、モンキチョウなどがいます。これらの蝶は山頂でも平地でも見ることができます。
山地に生息する蝶
蝶には平地に生息する蝶だったり、山地に生息する蝶がいます。多くの人は平地に生息する蝶にはよく出会いますが、山地に生息する蝶は出会う機会がないと思います。
山地に生息する蝶としては、例えばフジミドリシジミやウラキンシジミなど、山地性のゼフィルスと呼ばれる蝶がいます。また、コジャノメやクロコノマチョウなど、低山地に生息する蝶もいます。アゲハチョウ科の蝶では、ミヤマカラスアゲハは主に山地に生息します。
里山に生息する蝶
最近は徐々に少なくなっている里山ですが、里山にはその環境に適応した多くの蝶が生息しています。例えば、日本の国蝶であるオオムラサキはその典型です。オオムラサキは山梨県などの里山に多く生息します。里山に適応した蝶は、近年の里山環境の減少により個体数を減らしており、絶滅が危惧される蝶も多く存在します。
草原に生息する蝶
草原に適応した蝶としてはヒョウモンチョウ類やホシチャバネセセリ、ゴマシジミなどがいます。これらの蝶は草原環境に依存しており、草原が消失すると姿を消してしまいます。高度経済成長期以降、草原環境は急激に悪化しています。それに伴い、草原性の蝶の個体数は著しく減少しています。その多くが絶滅の危機に瀕しており、各地で保全活動が行われています。
都市の公園に生息する蝶
都市の公園などに生息する蝶は、馴染みのある蝶が多いと思います。例えばモンシロチョウやモンキチョウ、アゲハチョウ、ヤマトシジミなどがその典型です。自然がほとんどない住宅地でも多く生息しており、お花畑に蜜を吸いに来る種類も多いのが特徴です。
これらの蝶は都市特有の環境に適応しており、例えばヤマトシジミの幼虫は住宅地などで雑草としてよくみるカタバミを食草としています。こういった植物を食草とするため、都市部でも多くの個体が生息しています。
蝶が発生する時期
蝶の種類によって、成虫が見られる時期が異なります。2月下旬頃のまだ肌寒い時期から見られる蝶や、4月頃にだけ見られる蝶、7月の梅雨の時期にだけ見られる蝶など様々です。一方で、3月から10月頃まで長い期間見られる蝶もいます。
2月下旬頃でも見られる蝶
2月下旬というと、まだ肌寒く昆虫の数は非常に限られます。こういった時期でも、何種類かの蝶を観察することができます。例えばキタテハやキタキチョウなどの成虫で越冬する蝶です。越冬する蝶は冬でも成虫の姿でいますので、気温が高い暖かい日には冬眠から覚めて飛び出します。
越冬しない蝶では、モンキチョウは新成虫が現れる時期が早く、2月下旬頃から観察することができます。モンキチョウは昔はオツネンチョウと呼ばれていました。2月下旬から成虫が見られるため、昔は越冬する種と考えられており、それゆえオツネンチョウという名がついていました。
4月頃の春先にのみ見られる蝶
3月頃から4月頃に成虫となり、その時期にだけ成虫が見られる蝶は「春の妖精(スプリング・エフェメラル)」と呼ばれます。その代表種はギフチョウとヒメギフチョウです。ギフチョウとヒメギフチョウは春の代表種としてよくメディアにも取り上げられます。それ以外にも、ツマキチョウやコツバメなどがいます。
7月頃の梅雨の時期にのみ見られる蝶
7月頃にのみ成虫が見られる蝶がいます。例えば、ジョウザンミドリシジミやアイノミドリシジミなどのゼフィルスと呼ばれるミドリシジミの仲間です。これらの蝶は6月頃に成虫となり、7月頃まで成虫が見られます。梅雨の時期と重なり雨となる日が多いため、成虫が観察できる日が限られます。また、この写真のように非常に美しい色をしている蝶であり、蝶好きの中では人気のある種となっています。
3月から10月頃まで見られる蝶
3月から10月頃まで長い期間見られる蝶としては、モンシロチョウやモンキチョウ、ヤマトシジミ、ツバメシジミなどがいます。これらの蝶は、1世代だけで春から秋まで成虫が生き残るのではなく、年に何回も世代交代を繰り返し、秋まで成虫が生き残ります。
蝶のエサ
蝶の成虫は花の蜜を吸うイメージを持っている人が多いと思います。これは間違いではありませんが、花の蜜が全てではありません。種類によっては花の蜜以外に、地面から吸水する種や、獣糞の汁、樹液を吸う蝶がいます。
花の蜜を吸う蝶
花の蜜を吸う蝶は非常に多くいます。モンシロチョウやスジグロシロチョウといったシロチョウ科の蝶やアゲハチョウ科の蝶、シジミチョウ科の蝶など、様々な種が花の蜜を吸います。また、蝶の種類によって好みの花が異なっており、例えばアゲハチョウ科の蝶の多くはツツジなどの赤い花を好みます。
地面から吸水する蝶
地面などから吸水する蝶も多くいます。例えばテングチョウやルリシジミ、キタキチョウなどです。アゲハチョウ科の蝶などは花の蜜も吸いますし、地面から吸水もします。時に複数頭で集団吸水する姿を見る機会もあります。また、屋外のプールで吸水するアオスジアゲハなどを見ることもあります。
獣糞の汁を吸う蝶
山地や林道に生息する蝶では、獣糞の汁を吸う種類もいます。例えばヒカゲチョウやクロヒカゲなどです。これらの蝶は人の汗も吸います。登山などをしていると、人の汗を吸いに来ることがあります。
樹液を吸う蝶
樹液を吸う昆虫としては、カブトムシやクワガタなどが有名ですが、昼間はスズメバチやカナブンに混ざってコムラサキやオオムラサキなどの蝶がいることがあります。蝶が好む樹液は、カブトムシやクワガタと同様にコナラやクヌギなどです。
蝶の習性
蝶には種類によって生態が異なり、例えば午前中に活動する蝶や日中に活動する蝶、夕方にのみ活動する蝶がいます。また、”蝶道”といって、同じルートを飛び続ける蝶もいます。
蝶道を作る蝶
クロアゲハなどのアゲハチョウ科の蝶の多くは”蝶道”があり、同じルートを飛ぶ習性があります。そのため、クロアゲハを1頭見つけた場所に留まれば、次々とクロアゲハが現れます。この習性を知っていると、アゲハチョウ科の蝶は見つけやすくなります。
午前中に活動する蝶
蝶の中には、必ず午前中にのみ活動する蝶がいます。例えばアイノミドリシジミやジョウザンミドリシジミといった蝶です。これらの蝶は決まった時間から活動を開始し、決まった時間に活動を終えます。そのため、午後にこれらの蝶を観察しに生息地に来ても、飛翔する成虫を観察することはできません。
日中に活動する蝶
日中に活動する蝶としては、エゾミドリシジミなどがいます。エゾミドリシジミは正午頃から活動を開始するため、午前中には飛翔する姿は観察できません。
夕方に活動する蝶
クロコノマチョウをはじめ、ヒカゲチョウの仲間の一部は主に夕方に活動します。また、ウラクロシジミやハヤシミドリシジミなど主に夕方に活動します。
まとめ
この記事では虫捕り・昆虫採集の面白さを紹介するとともに、蝶を代表例として採集できる場所の特徴について解説をしました。
蝶に限らず、昆虫には1種類1種類全てに生態があり、食べ物や活動時間、活動場所などが異なります。これらの特徴を理解すると、自然への理解が深まるとともに、昆虫の楽しさや興味が増していきます。
この記事を参考にしていただき、昆虫の楽しさを感じる人が1人でも増えればと考えています。
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