子供がアゲハチョウを飼育してみたいと言っているけど、どうやって飼育すれば良いのかわからない。
卵や幼虫をどうやって捕まえるの?食べ物はどうすれば良いの?
これらの疑問に答えるため、この記事では、アゲハチョウの幼虫を飼育する方法について徹底解説します。
アゲハチョウ(ナミアゲハ)の幼虫の成長過程
アゲハチョウが成虫になるためには、以下の過程を辿ります。
卵 ⇒ 幼虫(1齢から5齢) ⇒ 蛹 ⇒ 成虫
卵から成虫になるそれぞれの過程を、写真付きで紹介します。
アゲハチョウの卵
産卵直後の卵は黄色い卵です。
時間が経つにつれて徐々に黒くなってきます。
アゲハチョウの幼虫
孵化して間もないアゲハチョウの幼虫です。大きさは数ミリ程度しかなく、見つけるのも大変です。産まれた直後は黒色の幼虫で、毛が生えています。
孵化してしばらくは以下の写真のように黒色と白色で、鳥の糞のような模様をしています。これは、鳥の糞に擬態することで鳥の捕食から身を守っていると言われています。
その後、脱皮して大きくなると、以下の写真のように緑色の幼虫になります。この頃になると非常に食欲旺盛で、大量の葉っぱをたべるようになります。
アゲハチョウの蛹
5齢幼虫になってしばらくすると、蛹になる準備を始めます。蛹は緑色か茶色のどちらかになります。
アゲハチョウの成虫
最後には蛹から羽化して成虫になり飛んでいきます。
蛹が羽化するのにかかる日数は以下の記事でまとめています。
アゲハチョウ(ナミアゲハ)の幼虫の飼い方
アゲハチョウの幼虫を飼育する方法には「屋外で飼育する方法」と「室内で飼育する方法」の2つがあります。それぞれの方法について解説をしていきます。
室内で飼育する方法
室内飼育の具体的な方法
室内でアゲハチョウの幼虫を飼育する場合の手順は以下の通りです。
- ミカン科の植物を室内で育てるか、ミカン科の植物の葉っぱを取ってきて、容器に入れる。
- 卵や幼虫を捕まえてきて、室内の用意した葉っぱに移す。
- 切り枝などで葉っぱを取ってきた場合は、こまめに葉っぱを交換する。
- 定期的に糞を取り除くなど、容器の中を清掃する。
特に重要なのは葉っぱをこまめに交換することです。室内で植物を育てる場合は問題ありませんが、アゲハチョウの幼虫はみずみずしくて新鮮な葉っぱしか食べません。そのため、常に新鮮な葉っぱを準備することが大切です。
屋内飼育に必要なもの
屋内飼育に必要なモノは以下の3点です。
- 虫かご
- 食草(ミカンやカラタチなどの葉っぱ)
- アゲハチョウの幼虫や卵
虫かごはそれほど大きなもので無くてもかまいません。我が家では10㎝×15㎝程度の虫かごを利用しています。
切り枝などで葉っぱを取ってきた場合は、枯れないように切断部を濡れたテッシュなどで包むようにして、こまめに交換すると良いです。
アゲハチョウの幼虫や卵は、もし近所の公園などにミカン科の植物があれば、探してみて下さい。近所にミカン科の植物がない場合は、ホームセンターなどで購入して育てておけば、アゲハチョウが卵を産みに来ます。
室内飼育のメリットやデメリット
屋外で飼育する方法
屋外飼育の具体的な方法
屋外で飼育する場合、最も手軽な方法としては、自宅の庭やベランダでミカン科の植物を育てることです。アゲハチョウの幼虫はミカン科の植物の葉を食べますので、ミカン科の植物を植えておくと卵を産みに来ます。
ホームセンターや通販などでミカン科の植物を購入して庭で育ててみましょう。ミカン科の植物として最もオススメなのは「カラタチ」です。我が家では、カラタチやミカン、ヘンルーダといったミカン科の植物を植えていますが、「カラタチ」が一番人気で、多くのアゲハチョウが卵を産みに来ます。また、「カラタチ」は非常に強い植物で、枯れる心配が少ないのもメリットです。
「カラタチ」は、ホームセンターで取り扱っていない場合が多いので、通販が便利です。
屋外飼育のメリットやデメリット
屋外飼育の実例(バタフライガーデン)
我が家では庭をバタフライガーデンにしており、様々な蝶が卵を産みに来ます。ミカン科の植物としては、「カラタチ」「ミカン」「ヘンルーダ」「レモン」を育てています。バタフライガーデンの作り方は、以下の記事で紹介していますので、興味のある方はこちらも併せてご覧ください。
アゲハチョウ(ナミアゲハ)の幼虫の飼育失敗事例
ヤドリバエに寄生
アゲハチョウの代表的な寄生虫の1つにヤドリバエがあります。ヤドリバエは、アゲハチョウが蛹になると蛹の殻を破って幼虫が出てきて、その後に蛹になります。
寄生されたアゲハチョウの蛹は、蛹化してすぐは緑色をしていても、数日経過すると茶色に変色して黒い点ができます。この症状が現れたらヤドリバエに寄生されている可能性が高いと言えます。蝶の寄生虫についての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
食草を食べなかった事例
6月19日に自宅のバタフライガーデンでカラタチにアゲハチョウが産卵しているのを見つけました。卵を採取して、自宅で室内飼育をすることにしました。
しかし、数日後に卵が食草から落ちてしまいました。産卵から3日後の卵の写真が以下です。
その後、6月23日に卵は孵化しました。アゲハチョウの幼虫の食草であるカラタチを与えましたが、全く食べません。
その後もカラタチを食べることなく、6月26日に亡くなってしまいました。卵が途中で食草から落ちてしまうと上手く成長しなくなってしまうのでしょうか。。。
飼育途中で食草を変更した事例
元々ヘンルーダを食べていた個体を、4齢幼虫からカラタチに変更しようとしました。しかし、食草の変更は上手くいかず、この写真の様にカラタチから離れていき、カラタチを食べることはありませんでした。
今回は4齢幼虫での食草の変更の失敗でしたが、一般的に食草の変更は、年齢が小さい幼虫ほど上手くいくと言われていますが、食べずに死んでしまうリスクもありますので、できる限り食草は変更せずに育てることをオススメします。食草の変更についての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
容器内が湿った状態となった事例
容器を水洗いし、拭きとらないまま飼育したため、容器内が湿った状態となりアゲハチョウの幼虫が死んでしまいました。アゲハチョウの幼虫は湿気が高すぎると弱ってしまうので、屋内飼育をする場合は適切な温度・湿度で飼育するようにしましょう。
ナミアゲハ以外のアゲハチョウの幼虫の紹介
この記事ではナミアゲハの飼育方法について紹介をしましたが、日本にはナミアゲハ以外にもアゲハチョウ科の蝶が何種類か生息しています。例えばクロアゲハです。
クロアゲハもアゲハチョウと同じ方法で飼育することができます。クロアゲハもナミアゲハと同じで、幼虫はミカン科の植物を食べるからです。我が家では屋外飼育でアゲハチョウを育てていますが、庭に植えているミカン科の植物にはアゲハチョウに混ざってクロアゲハの幼虫もいます。また、カラスアゲハの幼虫もミカン科の植物を食べますので、カラスアゲハの幼虫も混ざっていることがあります。この様に、屋外にミカン科の植物を植えておくと、様々なアゲハチョウ科の蝶が卵を産みに来ます。
主なアゲハチョウ科の蝶の幼虫のエサ(食草)は以下になりますので、参考にしてみて下さい。
種類 | 幼虫のエサの植物 |
アオスジアゲハ | クスノキ、タブノキなど |
クロアゲハ | カラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物 |
カラスアゲハ | カラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物 |
アゲハチョウ | ミカン、カラタチ、サンショウ、ヘンルーダなどのミカン科の植物 |
キアゲハ | パセリなどのセリ科の植物 |
ジャコウアゲハ | ウマノスズクサ |
以下では、それぞれのアゲハチョウの幼虫を写真付きで紹介します。
アオスジアゲハの幼虫
幼虫の食樹が街路樹や都心の公園に植栽されるため、都心の公園等でよく見られます。季節型があり、春型は夏型と比べて小型になる傾向があります。別名でクロタイマイと呼ばれることもあります。敏速に飛翔するため、飛翔中の撮影は困難を極めるが、花をよく訪れるため、放花中の撮影はそれほど難しくありません。地面で吸水する光景もよく見られます。
幼虫はクスノキ、タブノキなどの葉を食べます。
カラスアゲハの幼虫
カラスアゲハは、クロアゲハほどではありませんが都心部でも比較的見かける機会の多いアゲハチョウ科の蝶です。分布も広く、北海道、本州、四国、九州で普通に見ることができます。
カラスアゲハとオキナワカラスアゲハ、ヤエヤマカラスアゲハは以前は同種として扱われていましたが、交配実験等で詳細な分類の研究がなされ、その結果から現在は別種とされています。
ミヤマカラスアゲハほどではないものの、翅の表面の青緑色に輝く鱗粉が美しい蝶です。季節型がはっきりしており、春型は小型で夏型は大型となります。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物の葉を食べます。
ミカン科の植物であるヘンルーダで見つけたカラスアゲハの卵です。
卵から孵化した直後のカラスアゲハの幼虫は大きさが数mm程度しかありません。
何度か脱皮を繰り返して大きくなったカラスアゲハの幼虫です。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
脱皮を繰り返すと緑色の幼虫になります。
キアゲハの幼虫
キアゲハも都心部の公園などでも普通に見ることができ、北海道から九州まで広い範囲に生息しています。沖縄にも過去に観察した記録は3例ありますが、定着はしていません。
ナミアゲハと見た目はよく似ていますが、キアゲハは滑空するように飛ぶ特徴があり、慣れてくると飛び方や模様の違いにより飛んでいても見分けることができるようになります。
アゲハチョウの幼虫はミカン科の植物の葉を食べるのに対して、キアゲハの幼虫はパセリ等のセリ科の植物を食べます。
キアゲハの幼虫はパセリ等のセリ科の植物を食べます。この個体はパセリに産卵して孵化しました。
卵から孵化して1~3齢幼虫までは鳥の糞のような模様をしています。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
何度も脱皮を繰り返して4~5齢の幼虫となると、緑色の特有の模様となります。この頃になると食欲が旺盛で、あっという間に植物の葉がなくなっていきます。
蛹の色は緑色・茶色のどちらかになります。
クロアゲハの幼虫
クロアゲハは、都心部でも見かける機会の多いアゲハチョウ科の蝶です。分布も広く、本州、四国、九州、沖縄で普通に見ることができます。分布の北限は東北地方北部であり、青森県では稀で、北海道には生息していません。
沖縄に生息する個体は沖縄・八重山亜種とされていて、赤斑がよく発達する特徴があります。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物を食べます
孵化して間もないクロアゲハの小さな幼虫です。体長は数mm程度です。
脱皮をして少し大きくなったクロアゲハの幼虫です。鳥の糞に擬態することで、天敵である鳥から自らの身を守っています。
ナミアゲハやカラスアゲハの幼虫の臭角は黄色ですが、クロアゲハは赤色です。
脱皮を繰り返すと緑色の幼虫になります。この頃になると体も大きくなり、食べる葉の量も非常に多くなります。蛹までもうすぐです。
モンキアゲハの幼虫
モンキアゲハという名が示す通り、大きな黄色斑が後翅にあるのが特徴です。関東地方以南の山地に多く生息しており、新潟県や宮城県でも観察はできるものの分布は限られます。また、沖縄本島には生息していますが、八重山諸島では迷チョウとなります。山地の道路などでよく見かけることができ、チョウ道が最も明確に見られる種の1つです。
幼虫はカラスザンショウやカラタチなどのミカン科の植物の葉を食べます。
東京都文京区の小石川植物園で観察したモンキアゲハの幼虫です。鳥の糞に擬態しています。脱皮を重ねると緑色の幼虫となります。
アゲハチョウの幼虫の飼育に関するよくある質問
【質問1】幼虫が突然動かなくなりました。理由は?
回答:脱皮の準備をしている可能性が高い
順調に育っている幼虫が突然1~2日程度全く動かかなくなることがあります。その時は、脱皮の準備をしている可能性が高いです。アゲハチョウの幼虫は通常、蛹になるまでに4回程度脱皮をします。脱皮の前は動かなくなり、食草も食べなくなります。
【質問2】屋外飼育をしていたところ、幼虫が急にいなくなりました。なぜでしょうか。
回答:鳥などに食べられた、もしくは蛹になるために食草から離れた可能性が高い
幼虫の天敵は鳥です。幼虫が突然いなくなった時は、鳥などの天敵に食べられてしまった可能性が考えられます。
もう1つの可能性としては、蛹になるために食草から離れた可能性が考えられます。幼虫は蛹になる時、通常は食草から離れた場所で蛹になります。もしいなくなったのが終齢幼虫の蛹になる直前であれば、どこか遠くで蛹になっている可能性が考えられます。
【質問3】蛹が成虫になりません。なぜでしょうか。
回答:越冬している可能性や、寄生している可能性、死んでいる可能性が考えられます。
アゲハチョウは蛹になってから羽化するまで、通常1週間から10日程度要します。それ以上経っても羽化しない場合は、越冬している可能性や、寄生している可能性、死んでいる可能性が考えられます。
アゲハチョウは蛹の状態で越冬します。そのため、蛹になったのが秋であれば、越冬して次の春に成虫になる可能性があります。
また、蛹に穴が空いている場合は、寄生虫に寄生されている可能性が考えられます。
【質問4】アゲハチョウの幼虫が下痢をしました。大丈夫でしょうか。
回答:蛹になる直前はアゲハチョウは下痢をします。
アゲハチョウの幼虫は蛹になる直前に、体内の余分なものを排泄します。下痢をしたら間もなく蛹になります。
【質問5】蛹が地面に落ちてしまいました。どうしたら良いでしょうか。
回答:割り箸などで蛹の受けを作ってあげましょう。
蛹が地面に落ちてしまうと、羽化した時に無事に蝶に慣れない可能性が高まりますので、下の写真の様に割り箸などで蛹の受けを作ってあげるようにしましょう。蛹の下半分が受けられるような形であれば問題ありません。
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