このブログではよく似た蝶の見分け方を紹介しています。見た目がよく似ている蝶は、初心者の方には(時には上級者でも)見分けるのが難しいと思います。例えば、アゲハチョウとキアゲハの見分け方、モンシロチョウとスジグロシロチョウの見分け方などは、最初に悩むところだと思います。
また、中級者や上級者になってきても、ゼフィルスの見分け方やサカハチチョウとアカマダラの見分け方、さらにはスジグロシロチョウとヤマトスジグロシロチョウとエゾスジグロシロチョウの見分け方などは簡単ではありません(※ヤマトスジグロシロチョウに関しては、もはや見た目では判別不能です)。
この「よく似た蝶の見分け方」のシリーズでは、こういった蝶をどの様に見分けるのかについて紹介をしていきたいと思います。
この記事では、ギフチョウとヒメギフチョウの見分け方について紹介をしたいと思います。
ギフチョウとヒメギフチョウの見分け方
ギフチョウとヒメギフチョウの見分け方を紹介します。まず和名の通り、ヒメギフチョウはギフチョウと比べて小型になります。また、前翅最外縁の黄色帯は、ギフチョウでは内側にずれますが、ヒメギフチョウはずれないという特徴があります。さらに、後翅の外縁部の斑紋は、ギフチョウは橙色ですが、ヒメギフチョウは黄色となります。具体的には以下の写真をご覧ください。
ギフチョウの紹介
ソメイヨシノの開花とほぼ同時期に成虫が発生し、春にだけ見られる日本を代表する蝶の1種(日本の固有種)です。
「春の女神」と呼ばれ、度々メディアにも登場します。
昔は「ダンダラチョウ」とも呼ばれていました。
成虫は10時頃から飛翔を開始し、カタクリやタチツボスミレ等の丈の低い花を好んで吸蜜します。
高度経済成長期以降、急激に数を減らしており、1973年頃までは八王子市高尾山一帯の小仏峠・景信山・御殿峠に生息するなど、南関東でも広い範囲で生息していましたが、現在は南関東では神奈川県の一部にしか生息していません。
明治16年(1883年)に初代名和昆虫研究所所長の名和靖さんが学会に紹介し、岐阜県でこの蝶が得られたため、ギフチョウと名付けられました。
似た種として、ヒメギフチョウがいます。ヒメギフチョウと生息域がはっきりと分かれており、おおむねフォッサマグナより西では本種が、東ではヒメギフチョウが生息します。
長野県の白馬村をはじめとする数か所では両種が混在して生息しています(生息域の境界線を「リュードルフィア線」と呼ぶ)。
警戒心があまり高くなく、近づいても逃げないことがあります。
幼虫はカンアオイが主な食草です。
ですが、カンアオイの仲間であれば何でも食すというわけではなく、特定種のカンアオイしか食べないことも明らかにされています。
生息する地域によっても食するカンアオイは異なります。
ヒメギフチョウの紹介
ギフチョウと同様に、春を代表する蝶の1種です。
カタクリ等の花をよく訪れます。
警戒心はそれほど高くなく、近づいても逃げないことが多いです。
ギフチョウと似ますが、本種の方が小型であること、黒帯が細くて後翅外縁のオレンジ列が地色と同じ黄色になること等で違いがあります。
また、ギフチョウと生息域がはっきりと分かれており、おおむねフォッサマグナより東では本種が、西ではギフチョウが生息します。
長野県の白馬村をはじめとする数か所では両種が混在して生息しています(生息域の境界線を「リュードルフィア線」と呼ぶ)。
亜種として、本州亜種(inexpecta)、北海道亜種(yessoensis)が存在し、北海道亜種は、「エゾヒメギフチョウ」と呼ばれることもあります。
幼虫はウスバサイシン、オクエゾサイシンを食草とします。
ギフチョウとヒメギフチョウの分布の違い
ギフチョウとヒメギフチョウは、どちらも原始的なアゲハチョウであり、見た目は非常によく似ますが、生息域ははっきりとわかれています。
わかれている理由としては、幼虫の食草が、ギフチョウはカンアオイ、ヒメギフチョウはウスバサイシンとわかれており、その分布に左右されるためです。
生息域の境界線は、「リュードルフィア線」と呼ばれ、その境界線上には、ギフチョウとヒメギフチョウの両種が混在する地区があります。
なお、「リュードルフィア」とは、ギフチョウの学名に由来します。
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